まえがき
近年、船員の高齢化がますます進展しており、それに従って高年齢船員の被災する割合も年々増加し、平成9年度における50歳以上の死傷災害構成比は46.6%と前年度に比較して1.8ポイント高くなっている。また、特に「転倒」災害がその発生率で横這い状態で発生している。
この原因としては、船員の高齢化、これにともなって増加する熟練者ならではの災害、あるいは、船内機器が近代化され機器類の取り扱いが煩雑になっていること、さらには、1隻あたりの乗組員数が減少していること等に因り、より効率的な作業が要求されるようになってきていること等が考えられる。
このような状況に対処するため、個々の船員に単純な作業や慣れた作業を行う上での作業の安全確保を再認識してもらい、油断や過信からくる災害を防止するため、作業ごとに最も安全で効率的な作業動作の方法と手順を分析し、これを基に船員が作業を行うという「作業の標準化」を確立する必要がある。
これらを受け、当協会では、平成9年度を初年度とし、作業の標準化策定事業を行っているが、本年度も引き続き、漁業のなかでも全国的に行われ、かつ労働災害の発生率の比較的高い業種である「沖合底びき網漁業」を対象に選んで調査検討を行った。
調査検討にあたっては、調査員を現場に派遣し、当該漁船における各作業毎の人員配置状況及び作業方法、並びに作業環境等について実態調査を行い、この調査資料を基に、委員会が検討し作成したものが本報告書である。
この調査にあたり、こころよく調査員に乗船の機会を与えていただいた、稚内機船漁業協同組合、大浦漁業株式会社、八戸市経済部水産事務所、秋山漁業興冨丸、さらには調査研究にご協力いただいた千葉工業大学学生諸氏、ご後援いただいた運輸省、水産庁および社会保険庁の関係者に対し衷心より感謝の意を表する次第である。
委員会名簿(順不同・敬称略)
委員長 飯山 雄次 千葉工業大学 教授
委 員 三澤 哲夫 千葉工業大学 教授
委 員 小林 務 (社)漁船協会 専務理事
委 員 平石 英世 (財)海難審判協会 総務部長
委 員 久宗 周二 (財)海上労働科学研究所 研究員
委
員 斎藤 清伍 全日本海員組合 水産部副部長
委
員 大下 義明 全日本海員組合 教宣部副部長
委 員 大曽根義克 (社)大日本水産会 漁政部長
オブザーバー
山本 紀昭 運輸省海上技術安全局船員部労働基準課
安全衛生室長
武舎 信之 社会保険庁運営部保険指導課長
松葉 武彦 水産庁漁政部企画課 企画官