? 問題と課題
?-1 基本的問題
1.マレーシア造船産業の基本的問題は、現在、限られた国内造船需要に依存する造船所が乱立していることにある。統計によると、中規模造船所(1,500-5,000DWT)の平均稼働率は約17%程度であり、小規模造船所(1,500DWT未満)では22%である。1992年から1995年にかけて稼働率は向上したが、将来の稼働率は、OPV以外に新造船の発注が確実に見込めるものがないため、見通しが立たない。
2.マレーシアが造船国としての国際競争力をつけるためには、設備や国内の支援産業を大幅に強化する必要がある。多くの造船所では、施設の規模が限られている上に、設備もかなり老朽化している。国内造船所は化なり広範囲にわたる技術能力を具えているが、人力に依存する部分が大きく、先端的なロボットやコンピュータの導入は進んでいない。したがって、労働集約的にならざるを得ない。
3.これらの課題を解決するためにマレーシアは、造船業の競争力を強化、重工業の発展に向けた重点国策の重要な要素として造船業を育成、市場の需要を刺激し、提供可能なサービスを多様化するために国内外の市場開拓に一層努めることなど、さまざまな側面にわたって検討を続けている。
?-2 労働と経験
わが国の造船所では熟練労働者と専門技術者が不足しているために、工数とコストの上昇を招いている。労働者の技能不足の一因は、大半が技術教育機関で体系的な教育を受けたのでなく、職場での実務経験のみに頼っているところにある。訓練機関において、具体的な海事産業のニーズに対応した課程の数が少ないことも、マレーシアにおける造船産業の趨勢と発展の制約要因となっている。このことは、他産業と比べて、労働者、とりわけ技術者の求人をむずかしくしている。
?-3 造船資材の輸入依存
以前から認識されていることだが、一部の造船資材が国内で調達できないために、材料費が割高になり、納期が遅くなっている。この問題は、修繕船部門にも大きな影響を及ぼしていて、その結果、船舶の保守・修繕コストが高くなっている。
?-4 その他の要因
1.現在の経済情勢
現在の経済情勢から資金繰りの問題が深刻化している。アジア経済危機のために、造船所への資金供給は制約され、年率17〜20%という高い金利負担を強いられ、造船事業者の財務状況を悪化させている。通貨価値の変動も造船業の経営状況をむずかしくする要因である。新造船契約の大半は自国通貨リンギット建てなのに対して、資機材の調達は外貨建てなので、マレーシアの造船所は為替差損のリスクにさらされることになる。