? 将来の展望と戦略的方向性
1.マレーシアの造船産業は、国内需要への対応を基本的として活動している。競争力強化のためには、さまざまな改善策が必要とされる。特に次のような点で改善が望まれる。
・既存造船所の生産ライン設備・装備の自動化を一層進めること。
・インフラストラクチャと個々のプロジェクトのニーズに対応するための大規模投資。
・多様な種類と仕様の大型船に特化した造船所の建設。
・支援産業、機器メーカー、製鉄所、エンジニアリング事業等を確立し、部品や資機材の輸入依存を軽減すること。
・技能、技術、販売、検査、認証等の面での向上を目的とした、適切な支援機関。
2.マレーシアは、造船業を主要産業とする計画推進に先だって、これらの基本的ニーズを充足しなければならない。現状のままでは、世界の主要大型船建造所とはなかなか競合できない。
3.マレーシア造船業は漸進的発展を指向すべきであり、小規模な生産活動を継続しなければならない。小型船艇、特定用途向け30,000DWT以下の船舶の建造と、保守、オーバーホール、改造を含む船舶修繕に全力を注ぐ。同時に、既存の施設・設備を改善するために、グレードアップと近代化を進めなければならない。
4.1993年には、878百万リンギット相当の小型船舶と浮体構造物が輸入されたのに対して、修繕を含めた輸出総額は436.4百万リンギットに過ぎない。この入超は輸入代替の余地があることを示している。新造船部門でもう一つ有望な領域は、自航バージ、セメント運搬船、フェリー等、15,000DWTから20,000DWTまでの特定用途向け専用船である。
? 政府の支援
1.造船業の立地が地理的に拡散しているために、産業の発展に必要とされる充分な共働効果が得られないことから、マレーシア政府は、インフラストラクチャの要件に合致する開発の可能性について検討してきた。この観点からして、臨海工業団地が隣接した専門造船所を建設すれば、造船業の発展に貢献するものと見込まれる。
2.臨海工業団地は、互いに支援し合い、補完し合う、部品製造・サービス企業のコングロマリットに立地場所を提供することになる。したがって、ここに立地する企業は、それだけ競争力が強化され、効率化することになる。
3.臨海工業団地の造成に伴って、全システムが統合的に管理され、効率の改善が期待される。マレーシア政府の意図は、造船所に隣接して工業団地を開発することにある。この措置によって造船業の成長が促進されることになろう。開発が計画されているインフラストラクチャには、以下のような施設が含まれる。
・検査・標準化・認証センター。
・取引・販売・技術データ・生産工程関連の訓練・情報センター。
・廃棄物収集・処理・処分センター。
・代理店や物流事業者のネットワークが参画する、造船用資機材や部品の集配センター。
・機器メーカーやエンジニアリング支援産業の発展を助ける専用施設。
4.造船分野に対する投資は、疑いなく大きなリスクを伴なう。しかし、政府の支援と民間銀行の参加によって、船舶金融の便を図る海運基金が設立された。この措置は、海運業における企業家精神を刺激し、船舶の新規発注を容易にし、船隊の拡大を促すことを目的としている。したがって、国内の新造船・修繕船設備の拡充と近代化に役立つ。