オーストラリア
オーストラリア造船業
序論
オーストラリアには高度に発達した造船業があり、その輸出志向は高く、成長の速度も著しい。オーストラリア造船工業会はこの業界の大部分を代表し、政府、主要造船事業者、諸顧客グループ間の密接な関係を築き上げてきた。以下の概要は、オーストラリアの造船業の現状認識に役立てようという意図から起草したものである。
背景
商船建造についていうと、オーストラリアでの造船業の歴史は1789年にさかのぼり、ごく最近、劇的ともいえる非常に重要な変革を遂げたばかりである。わが国の造船業の主力は2、3の特化したニッチ分野に移行したが、これは大きな成功をおさめた。オーストラリアではもはや、鋼製のコンテナ船や撒積船が建造されることはなく、今やカー・フェリー、旅客フェリーや大型動力豪華ヨットなどの大型アルミ高速船が中心になっている。
建造される商船の80%以上は輸出向けで、世界の高速フェリー市場の4分の1から3分の1をオーストラリアが占めている。2、3社は現在も鋼船を建造しているが、漁船や石油・ガス業界向けのオフショア・サービス船等、特殊な分野を対象にしている。
わが業界は過去の成果を活用して、強力な地位を築き上げている。オーストラリア造船工業会は、21世紀に入るまでに輸出額を10億ドルに拡大することを目標とする「戦略計画」を立てているが、これを達成するためには2000年までの平均年間伸び率を約25%に維持しなければならない。近年の伸び率は年間20%程度であり、この伸びが継続する保証などないことはいうまでもない。国際市場では、既存メーカー、新興メーカーとも、みなオーストラリアからシェアを奪おうと躍起になっている。
オーストラリア造船業の成長は、革新的な設計と建造においてリードを続けること、高水準の品質とコスト競争力を維持することにかかっている。また、新たなニッチ市場や応用分野を研究し、それらに照準を合わせて行かなければならない。例を挙げれば、高速客船の設計技術を貨物船に応用すること、「空飛ぶ船」、すなわちエアクッション効果と翼を組み合わせた船など、新規開発についての長期的な展望やその意義を、一層深求することなどである。この点に関連したプロジェクトとして、下記の2件が挙げられる。
- 連邦政府と業界の協力により、新型高速船のための貨物輸送需要に関する調査が完了した。
- オーストラリア科学技術審議会が、業界からの参加者を得て、海運連合(シッビング・パートナーシップ)を結成し、海運・造船業界における科学、技術、研修の将来のニーズについて調査を行っている。この連合は1996年9月にその調査結果について報告書を発表した。
新製品の開発には、高度の訓練を受け、技能を具えた技術監督者、指導者が十分確保されていることに加えて、技術革新と研究開発の一層の振興が必要とされる。技術革新は業界と諸研究機関との間の連携の強化によって促進することができる。該当する研究機関としては、オーストラリア海事工学協同研究センターや、政府の補助を受けている高等教育機関も含まれる。技能については、造船技術、造機技術、その他の分野における特殊技能がきわめて重要で、こういう技能はひとたび失われると補充が非常に困難でもある。