オーストラリア
オーストラリア代表団のプレゼンテーションは、オーストラリア政府が委嘱した造船業調査パネルの報告に基づくものであった。この報告書は、同国の造船産業政策の枠組みと、政府に対するパネルの勧告が中心となっている。また、造船業の生産力を強化するためには、事業の研究開発に対する支援を強化し、研究を商業ベースに乗せること、投資先としてのオーストラリアへの魅力を高めること、貿易国としてのオーストラリアの国力を強化することが必要であることも指摘された。さらに、オーストラリア造船業が維持し得る、競争力の中心的要素は、生産面における高度の専門能力であり、その眼に見える指標は、価格に見合う価値と、性能、品質であることが指摘された。
インドネシア代表:オーストラリアとニュージーランド向けのフリゲート艦10隻の建造計画の進捗状況は?10隻中、すでに引渡済みは何隻か?
ニュージーランド向け1隻、オーストラリア向け2隻、計3隻が引渡済み。引渡しということは、すでに稼動可能で、海軍が使用しているという意味である。ただし造船工事に関する限り、5隻が進水済みで、うち2隻は係留されて、電子システムの艤装が行われている。同時に、6隻目の船殻を現在建造中である。フリゲート艦建造工事の現状は以上の通り。
中国
中国代表団は、現在急速に、特に鋼船建造において、統合的システムヘの発展が進んでいる自国の造船産業の現状について報告した。また、1982年に設立された国有造船グループ中国造船工業公司(CSSC)が造船・修繕船・船舶輸出産業において果たしている役割も報告された。造船技術の開発に政府が継続的に努力を傾けてきたために、中国の造船所は製品の質、生産性、世界市場における価格競争力の各面で前進を遂げた。しかしアジア地域を現在見舞っている経済危機のために中国の市場経済も影響を蒙り、増税が実施されたため造船所の負担も増大した。政府の方針により造船所が運転資金を調達できるように信用供与が行われたため、財務状況は好転するものと期待されている。
インドネシア代表:(a)CSSCの現状はどうか、またCSSCは政府のどの部の管轄か?交通部か、工業部か?独立した機関か?CSSCの長は大臣と同等の身分か?(b)中国では輸出入信用の金利はどういう条件で決まるのか?
(a)CSSCは以前には機械工業部の管轄下にあったが、現在では直接、国務院に属している。一部の方々はご承知かもしれないが、中国では一つの事業単位として再編成の過程にある。(b)中国の造船所が中国の輸出入銀行から供与される信用は、造船所の運転資金だけを対象としている。もちろん輸銀は、市中金利より低利で融資してくれる。
フィリピン代表:CSSCの再編成というのは市場経済化へ向けての再編成か?それとも未だに完全な国家管理下にあるのか?
その通り。CSSCは政府機関ではなく、民間企業グループとして再編成され、市場経済に対応する。
フィリピン代表:CSSCの300,000DWT乾ドックは修繕用か、新造用か?
300,000DWT乾ドックは主として新造用だが、まだVLCCは受注していない。このドックで建造した最大船型は150,000DWTのタンカーと撤積船にとどまっている。
フィリピン代表:中国は外国からの投資に開かれているか?我々が中国の新造船・修繕船部門に投資することは可能か?
もとより、政府が定めた規則に従って、中国は新造船・修繕船部門への外資を歓迎するが、ただ私の知る限り、中国の造船部門に関心のある投資家はあまりいないようだ。この問題には後で触れたいと思う。
サンドバル議長:フィリピンは海外からの投資や合弁事業に開かれている。わが国にはシンガポールや日本の企業から援助を受けた大型造船所がある。新造船・修繕船産業を発展させるために、もっと外国企業がわが国に進出してくれることを望んでいる。それがフィリピン政府の意向でもある。
Zhu氏:中国は外国からの投資に開かれていると申し上げたが、新造船・修繕船業界ではいくつかの合弁事業が成立している。例えばChina
Ship OceanCo.(COSCO?)と日本の川崎重工業の共同出資による南通造船所と、もう一つ韓国企業が出資している寧波造船所がある。
サモア代表:コンテナ船では470TEU以上の船型しか建造していないようだが、例えば350とか380TEU以下の小型コンテナ船も建造する意向はあるか?
私の承知しているところでは中国で建造された最小のコンテナ船は470TEU型だが、もっと小型の船を造るのは容易だから、さらに小さいコンテナ船を建造するのに問題はないはずだ。
ベサム氏:私が質問したいのは、サモア政府が最近325TEU型の小型コンテナ船を売却して、同じ程度の積載能力の、例えば350とか380TEUといった船を買おうとしているからだ。
サンドバル議長:そういうことなら、サモアからはフィリピンの方が近い市場だ。
インドネシア代表:中国の税制について簡単にご説明頂きたい。例えば輸入関税、修繕船や新造船用の原材料、部品、機器などの輸入にかかる税金、それから付加価値税についても。
中国の税制は複雑だ。中国船主は新造船、中古船とも外国から輸入することが多いが、それは税金が掛からないだ。船舶の輸入には輸入税が掛からない。中国船主は新造船であれば日本、韓国、その他の国から、中古船であればギリシャ船主から買う。
フィリピン代表:中国では、新造船や修繕船用の原材料、部品、機器などの輸入についてはどうか、何らかの輸入税が掛かるのか? 資機材の輸入については、建造する船舶が海外船主向けであれば輸入税は掛からないが、中国国内船主向けであれば、造船所は税金を払わなければならない。だから中国では海外から受注する方を選ぶ造船所が多い。
サンドバル議長:わが国でも制度は同じだ。外国船主からの受注なら税金が掛からないが、国内船主だと掛かる。
フィリピン代表:漁船は大体どんな種類の、どんな船型を建造しているのか。客先はどういうところか。
中国では漁船を建造している造船所が多いが、CSSCでは漁船の建造をやめたので、今のご質問にはお答えできない。