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(5) 海水中生物の殺滅効果

 以上の実験結果から、電気処理法の海中生物に対する殺滅効果は、以下のようにまとめられる。

●多孔質炭素電極は、細菌類を除く海水中の生物など粒子を付着・吸着する。 その除去効果は、甲殻類(動物プランクトン)等の大型のサイズで大きい。 しかし、電極の開孔径が100μmの場合には、電解槽を通過ものが多い。 また、この付着・吸着量は、電解槽内の滞留時間が短いほど(流速が速いほど)多く、最短(最速)の実験ケースの滞留時間約2秒では、浮遊物質量で50%以上の除去率である。

●電解槽を通過した生物に対する電位印加の損傷効果は、各生物毎に次のようにまとめられる。

○植物プランクトンに対しては、種類による違い(鞭毛藻類に大きく,珪藻類に小さい)があるものの、約10秒の電位印加が多くの細胞に対して損傷を与える目安になると考えられた。

○動物プランクトンは、約2秒の電位印加でほとんどが損傷を受けると考えられた。

○細菌類は、約2秒の電位印加でほとんどが損傷を受けると考えられた。

○これらを総合すると、通電量3V,1A、電解槽内電位1Vの微量な電力を、約10秒印加すると、ほとんどの生物に対して損傷を与えることが可能であると判断された。

 

2.3 有毒プランクトン・休眠胞子の殺滅実験

(1) 実験目的

 電気処理法による有毒プランクトンの海底泥中休眠胞子(渦鞭毛藻,Alexandrium属のシスト)の殺滅実験を行い、リバラスト代替手段としての有効性を検討する。

 

(2) 実験方法

? 実験供試試料

 実験に用いたシストは、平成10年8月19日に、広島県呉湾で海底泥と共に採取した。

 

? 検討方法

 実験は、下記の自家蛍光法とプリムリン染色法の2方法で行い、電気処理法による殺滅効果を検討した。

 

a 自家蛍光法

 自家蛍光法とは、海底に分布するシストは、光合成色素であるクロロフィルを持たない状態で休眠しているが、発芽直前(発芽力が備わった)状態になるとクロロフィルを発現し、発芽・遊泳に備えることを利用するものである。
 実験は、海底から採取した泥中のシストを充分に休眠させ(事前の情報から呉湾のAlexandrium シストは、25℃で1ヶ月以上の貯蔵で発芽力が備わるとされていた。)、電気処理を行い、電気処理しない対照のシストと共に、クロロフィルが発現する条件(4〜5日間、12.5℃、明条件)で培養後に、落射蛍光顕微鏡下でクロロフィル発現状況を観察した。

 

b プリムリン染色法

 プルムリン染色法とは、染色材のプリムリンを用いて後述の方法で染色し、落射蛍光顕微鏡で観察すると、正常なシストは黄緑色発光するのに対し、死んだシストが発光しないことを利用するものである。
 実験は、自家蛍光法と同じ充分に休眠させたシストを電気処理し、電気処理しない対照のシストと共にプリムリン染色処理して、落射蛍光顕微鏡下で発光状況を観察した。

 

 

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