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 今回のマ・シ海峡電子海図の発刊には次の4つの条件が整ったことから実現可能となった。
?水路測量の完了
 マ・シ海峡の海図は、1930年までの英国、オランダの測量による海図が使用されていた。その後、同海峡を通り主に日本に至るタンカーの大きさは年々増大し、喫水が19メートル近くになったタンカーにとって、20メートル前後の水深が不確実な海図はもはや使用可能なものではなく、当時の船長は経験を頼りに、このいたるところに浅所がある海峡を航行していたのである。その後、海運界、IMCO(現在のIMO・国際海事機関)等からの強い要望があり、1969年日本の援助による水路調査が開始された。その後何回かの調査が行われ、1998年3月、海上保安庁水路部において沿岸3カ国を招いて測量原図承認式が行われ、ここにすべての調査が完了した。ENCはこれらの測量結果を基に作成される。

?電子海図の性能基準
 世界中を航行する船舶が使用するENCであるから、ENCの基準も統一されていなければならない。1969年IMO第19回総会において、ENCの性能基準が採択され、世界的に統一されたものとなった。これによってECDISユーザーは、どの国が発刊したENCでも使用できることとなった。なお、海上保安庁は同年には早くも世界最初のENCを発刊している。

?マ・シ海峡分離通航方式
 1998年IMO第69回海上安全委員会において、同海峡の新分離通航方式(TSS)が採択された。これはワンファザムバンクからシンガポール海峡東側出口までの全長約200カイリに及ぶ行程を、通行帯が全通して設定されたことになる。視界が良いときであれば船舶は航路標識を頼りに航行することができる。しかし、視界不良時にはレーダーやGPSによって得た位置を紙海図に記入することによって初めて自船が航路帯に乗っているのか外れているかが分かる。
 ECDISでは海図画面上にリアルタイムで自船の位置が表示されるため、航海士は容易かつ確実に自船の位置を確認することができる。このため新TSSにおける航行安全のため、ENCの果たす役割は大きい。

?日本財団の援助
 日本財団はマ・シ海峡の航路標識の整備等に過去30年以上にわたり約83億円の資金を投じてきた。今回開催した電子海図発刊のためのワークショップ(後述)も、財団の援助によるものである。
 マ・シ海峡沿岸3カ国のうち、シンガポールはすでに、シンガポール港および周辺海域の電子海図を発刊している。一方、マレーシア、インドネシアはENC発刊の設備は有しているものの、技術水準がまだ発刊できるまでに達していない。今回、日本財団の援助により、マ・シ海峡電子海図ワークショップをシンガポールにおいて開催したが、主催は当協会シンガポール連絡事務所が行い、海上保安庁水路部からは西田企画課長および穀田主任沿岸調査官に参加していただき協力をいただいた。

 
電子海図ワークショップ管理部門会議 合意文書に署名する
マレーシア・ラシップ水路部長(左)、
インドネシア・エロー水路部長(右)

 

 

 

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