講習会が開始された当初は、GMDSSがまだ十分浸透していないせいか、システムそのものがよく分からない関係者も多かったようですが、ビデオ放映やGMDSS機器を使用した講師の熱の入った説明に対し、皆熱心に受講され、特にGMDSS設備を利用した海難救助事例を紹介した時などは真剣に聞きいっていました。
また、質疑も当初は「どのような機器なのか」、「どんな船が対象になるのか」などの初歩的な質問が多かったのですが、完全実施が目前に迫っていた昨年の講習会では、質問もより具体的になり「衛星EPIRBの位置はどのようにして分かるのか、値段はどのくらいするのか」「搭載しない場合は罰則があるのか」などの質問が矢継ぎ早にあり、講師が舌を巻く場面もありました。
この講習会とパンフレットを使用した訪船周知活動を通じ、関係者にGMDSSについて十分理解していただき、初期の目的は達せられたものと思っています。
今後は、このシステムが有効に機能するために必要な機器の適正な取扱等に重点を置いた、啓もう活動を各種機会を通じ行うこととしています。
GMDSSの完全導入
1999年1月31日をもつてGMDSSの移行が完了しました。
海上保安庁は、1992年の導入時からGMDSS関連通信設備の運用を開始しており、1995年には日本語ナブテックス放送を、1997年には基幹MCC(業務管理センター)の運用を開始するなどGMDSSの完全導入に向けてさまざまな対応をするとともに、従来からのモールス無線電信による通信に関しても継続して対応してきました。
*MCC(業務管理センター)とは、衛星EPIRBからの遭難警報データの分析・配信等を行うセンターのこと
1999年2月1日からは、海上における遭難および安全に関する通信がすべてGMDSS体系の下で行われることとなったため、従来のモールス無線電信による遭難通信等は制度上、使用されないこととなっています。
海上保安庁においても、従来からのモールス無線電信による通信の取扱いや中短波無線電話による海上安全情報の提供等の旧システムから、DSC・NBDPによる通信の取扱いやナブテックス放送による海上安全情報の提供等の新システムに完全移行しています。
おわりに
GMDSSにおいては救助要請を迅速・確実にできる反面、その操作が容易であるため遭難警報を誤って送信してしまうケースが増えています。
海上保安庁では、この場合も確実にその警報を受信し救助体制を執ることとなりますので、誤発射したことがわかりましたら直ちに最寄りの海上保安庁通信所等に、ご連絡されるようお願いします。