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SOSの限界

 タイタニックの時代から現在に至るまで、モールス無線電信を主体とした遭難・安全通信システムは、時代とともにさまざまな場面で有効に活用されてきました。
 しかし
 (1) 遠距離通信に対応できないこと
 (2) モールス無線電信には専門的技術が必要であること
 (3) 突然の船舶の転覆等に際しては遭難信号が発信されない場合があること
 等の問題点が国際会議等において機会あるごとに指摘され、これらの問題点を根本的に改善することが求められました。

新しい遭難・安全通信へ(GMDSSの導入)

 新しい遭難・安全通信システムを構築するため国際海事機関(IMO)の海上安全委員会では、従来の海上における遭難・安全通信システムの改善について検討することを決定し、システムおよび無線設備の性能基準などについて検討が行われました。
 その結果、1988年に「1974年の海上における人命の安全のための国際条約(74SOLAS)」の改正が採択され、「海上における遭難及び安全に関する世界的な制度(GMDSS)」が1992年2月から導入されることとなりました。
 本邦からおよそ1,200カイリにも及ぶ広大な捜索救助海域を有するわが国においてもGMDSSの導入は必要不可欠なものであったことから、船舶安全法、電波法等の国内関連法令が整備され、船舶に対しては1999年1月31日までに、GMDSSに対応する通信機器等の設備の搭載が義務化されました。

 GMDSSの概要

 GMDSSでは、衛星通信技術やデジタル通信技術を利用することにより、船舶は世界のいかなる海域で遭難しても捜索救助機関や付近航行船舶に対して迅速かつ確実に救助要請を行うことが可能となったほか、陸上から提供される海上安全情報も自動受信方式により確実な入手が可能となりました。

【海難に関する通信】

○コスパス・サーサットシステム
 遭難した船舶の衛星EPIRB(衛星非常用位置指示無線標識)から自動的に発信される遭難警報を極軌道周回衛星で中継し、陸上において遭難位置・船名を特定する捜索・救助システム。


*衛星EPIRBとは、
遭難警報を発信するブイ方式の
衛星非常用位置指示無線標識のこと

 この衛星EPIRBからの遭難警報をコスパス・サーサットシステムにて検出し、捜索救助に結びついた事例としては、平成9年5月8日、南太平洋マーシャル沖で発生した日本漁船「第81豊栄丸」(96?、8人乗り組み)の海難があります。

 

 第81豊栄丸は、8日午前6時頃(日本標準時)、機関室から火災を起こし、火勢強く消火困難だったことから、乗組員全員が救命ボートに直ちに避難しました。
 船長は救命ボートに移る際に、衛星EPIRBを持ち込み、遭難警報を発射させました。
 この遭難警報を、コスパス衛星・サーサット衛星を中継して直ちに海上保安庁で受信し、その信号から遭難位置・船名を特定し、迅速な海難救助により、8人全員が救助されました。

 

 

 

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