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海外研修員見聞録

アメリカ (2)

富山商船高等専門学校教授
山崎 祐介

(3) 積荷移動方法シミュレーター

 低温貯蔵シミュレーター(低温度物理学に基づくLNG、LPGシミュレーター)の説明を詳細にわたって聞くことができた。
 設備については、積荷操作卓、ガス検知操作卓、安定性コンピュータ、バラスト操作卓、移送操作卓、遠隔受講生ステーション、部分的仕事の訓練者、携帯ガス分析者、教官操作卓、ソフトウェアー、通信機関があり、大がかりな施設であった。
 受講生は8〜10人が対象で教官は通常1人、そして第1週に理論的講義、第2週に装置、装備習熟、第3週にシミュレーターを使用したLNGカーゴのオペレーション、第4週にLPGの特別講義、シミュレーション、現場見学のプログラムが用意されていた。
 また、この大規模なタンカーの荷役シミュレーターは、15年前に作られたので少し古いが、受講生の乗船する船のパイピング等をすべてシミュレーション条件、パネル等を設定し直すことができるようになっていた。
 シミュレーターオペレーションの際は約1〜1.5時間の訓練と15分の体験報告を行っている。受講生はアメリカの船社派遣の航海士、コーストガードの航海士が主だった。日本からも以前に3〜4チームが会社から派遣されたが言葉の問題があったという。

米国の船員教育

 米国では州立、国立の専門学校、大学が多くあり、減少は少い。その理由は、それだけ船員(航海士、機関士)が米国にとって必要だからだ。10年後に陸上に転職する率は「正確には分からないが半分以上ではないか」という。
 また、転職先は日本と同じであった。転職先をどう考えるか、陸上にも対応できる教育内容があるかについては、ある学校とない学校にわかれていた。さらに航海/機関両用教育については、キングスポイントとマサチューセッツ等にこの考え方があるという。遠いので行くことができず、図書館でやっとマサチューセッツ海事専門学校のコースカタログを探し出した。またこの専門学校を卒業して現在MITAGSの教官をしている人にいろいろ聞くことができた。
 航海、機関の科目の多くは同じ専門部分だけが違っている。この違う部分だけが1年間に相当し、高度な士官と従来の3等航海士、3等機関士の教育内容の差である。高度の教育体制はあるが、現実にそのような船は少ない。
 両学科とも社船乗船実習が3回以上に分けて180日以上義務づけられている。通常は1、2、4年は大学所有の大型練習船に乗船し、3年で社船実習がある。この海上輸送学科、海上機関学科を卒業して6割が乗船するが、4割は陸上に就職する。陸上に就職する理由は、船会社からの求人が必ずしも100%でないことと、当初から関連陸上企業就職志向の学生がいるからだという。また、専門学校のカリキュラムもこれらに対応してできている。
 両学科の他に海上安全および環境汚染防止学科、施設および設備工学学科があり4学科構成である。これらは関連しており共通の科目が多く、1つの専門学校としての個性を有している。教える側は、基礎科学、人間工学、海上輸送、船舶科学および社会学に分かれている。
 なお、米国船の現在の典型的な乗り組み体制は、船長、1等、2等、3等各航海士、通信士、甲板員6人、調理員3人、機関長、1等、2等、3等各機関士、機関員3人の21人で、免状必要職のほとんどはアメリカ人で、その他は6〜7割がアメリカ人だという。


タンカー荷役シミュレーター




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