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 データの地理的分布では約8割が北太平洋であり、特に、日本近海および日本と北米西岸を結ぶ航路上、ハワイ航路上などにデータが集中しています。
 平成9、10年には、新たな事業「全球の船舶データセットの整備とそれを用いた海洋気候の長期変動の解明」が実施され、平成10年度末までにさらに約55万通のデジタル化が見込まれています。
 また、これを用いて過去のエルニーニョ現象の発生頻度、今世紀はじめからの近年までの海面水温、海上気象、海面気圧、風の変遷などが調査され、近年に比べて今世紀前半の海面水温が低いことなどが見出されています。
 さらに、平成10年度の補助事業のもとでは、これまでのデジタル化と品質管理が完了したデータを収めたCD-ROMが作成され、広く内外の関係機関・研究者の利用に供されます。
 図2は、神戸コレクションのデータ数をこれまで広く世界で利用可能であったデータ数とを比較したものですが、このデジタル化によって、太平洋域の利用可能なデータが増え、特に1915年前後は、利用可能なデータは数倍になっていることがわかります。これまで、過去のデータの少なかった海域である太平洋、ほとんどデータ世界的に非常に少ない第1次世界大戦ごろのデータを整備したことで、この事業は世界から非常に高い評価を受けています。

図2 神戸コレクションのデータとCOADS(注)の、太平洋域での年別データ数。神戸コレクションがデータの充実に大きく貢献している。
注)COADS=米国でまとめられている統合海洋気象データセット。これまで世界で広く利用されている。

 おわりに

 過去の気候の実態を知るためには、こうしたデータの発掘・デジタル化という地道な作業が欠かせません。神戸コレクションのデジタル化およびその解析が開始された平成七年以来、国内のみならず諸外国でもこの事業と神戸コレクションについての理解が深まり、それまで以上に、一層のデジタル化によるデータの整備が強く望まれています。
 また、データの公開により多くの研究者によるさまざまな解析が行われ、新たな知見が得られることが期待されています。




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