ナ号事故を契機とした資機材の改良等の取り組み
株式会社 カネヤス
代表取締役 岡本博之

筆者
OSTS
平成9年1月8日夜8時過ぎ、関西電力?大飯発電所から緊急電話を受けました。内容は「ナホトカ号から流出した重油が取水口に漂着する危険がある。OSTSについて詳細が知りたい」でした。
OSTSとは当社が開発した海上流出油回収システム「オイル・スリック・トローリング・システム」の略です。
このシステムは小型漁船を使って流出油を捕獲、回収、1次貯蔵することを目的に開発したもので、集油オイルフェンス、油回収バージ、充気式油貯蔵バージで構成されます。
このシステムは平時は分解して陸上に保管しておき、必要なとき必要な場所に10トントラック2台で陸上輸送できます。
OSTSはナホトカ号事件が発生するちょうど1年前に完成しており、インターネットの当社ホームページで紹介されていました。
要請に応えて
要請を受けた翌日、当社要員が視察したところ、取水口は幅数、10メートルの川のような水路の奥にあり、水路には常時数ノットの海流があることを知りました。
OSTSは本来は洋上で漂流油を機動的に回収することを想定したものでしたが、取水口への水路に定着網のように固定すれば、取水口に漂着する油を「待ち受けて」1回収可能と判断されました。
1月10日に正式な出動要請を受けた当社は、OSTSの開発にご支援をいただいた日本サルベージ?に協力を要請、両者共同して漂流油回収作業を請け負うことにしました。
OSTSは同日中にトラックに積み込まれ、翌11日には取水口への水路に展開されました。以後24時間体制の警戒が続けられましたが、1月16日の未明から流出油が漂着し始めました。漂着は22日まで断続的に続きましたが、漂流油は水路に張設されたオイルフェンスによって油回収バージに誘導され、バージに組み込まれたブラシコンベアーによって回収されました。
漂着した油はすべて油塊状で、大きさは犬のふん程度のものから直径2メートル、、厚さ40?程度までさまざまでした。粘度は牛ふんを想像させるような高粘度で、OSTSに装備した回収油移送用のスクリュー式ポンプはまったく役に立たず、ブラシコンベアーで回収された油はスコップでドラム缶に投入されました。
1月31日に動員が解除されて回収作業は終了しましたが、OSTSは作業までにドラム缶27本分の漂流油を回収しました。
回収作業から得たもの
今回の作業ではブラシコンベアーに漂流油を誘導するオイルフェンスの機種選定と展張方法が回収作業の成功を左右する重要な要素でしたが、当初展張したB型オイルフェンスは性能的にも強度的にも満足できるものではありませんでした。
今回のような作業ではD型やそれ以上の大型オイルフェンスが必要と判断されましたが、折角借用した石油連盟の外国製大型オイルフェンスも、展張を担当した作業員の不慣れから十分に活用できませんでした。