一方、輸送時の流動性を上げるために使われたであろうと推測されている添加物(*金属石鹸)がエマルジョン化をさらに加速させたのではないか考えられています。というのもナホトカ号が積載していたC重油の流動点(油が流動性を失う温度)マイナス23℃は、通常のC重油のマイナス1桁推度に比べ異常に低いこと、また、化学分析で高濃度のアルミニュウムが検出されたことが推測理由です。これは流動的向上のために、アルミニュウムと脂肪酸の結合した金属石鹸が使われた可能性を示唆しています。

ナ号流出油事故でのエマルジョン化油との闘い(2)
(金属石鹸=通常、石鹸と呼ばれるものは、ナトリウムなどのアルカリ金属と脂肪酸が結びついたものですが、金属石鹸はアルミニュウム、亜鉛、マグネシウム等の金属と脂肪酸が結びついたもので、金属の種類によって潤滑油、流動性向上剤、増粘剤、乳化剤等さまざまな用途に用いられています。)
以上、エマルジョン化の説明とエマルジョン化による流出油防除活動の困難さを簡単に述べましたが、流出事故が起こった場合に、被害を最小限に抑えるためには、流出油の性状変化予想とそれに適した資機材の準備が極めて重要です。
そのためには、エマルジョン化のメカニズム解明と気象・海象に応じたエマルジョン化の進行度合いの推定が可能となる必要があります。この分野のさらなる研究が望まれます。
