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特集

あれから2年

ナホトカ号事故の教訓と対策

 平成9年1月2日、ロシアのタンカー、ナホトカ号が日本海隠岐島沖で船首部分を残して沈没、また船首部分が福井県三国町に漂着、大量の重油が流出してから2年が経過した。
 その間、運輸省・海上保安庁を中心に対策が協議され、その教訓が生かされつつあるが、民間サイドでもさまざまな分野での対応策が検討されている。
 防除資機材の改良、エマルジョン化した流出油、微生物による油の分解、野性動物の保護、深海に沈んだナ号からの油の抜き取りなどについてそれぞれの専門家に聞いた。


   筆者

 株式会社 海洋開発技術研究所
 専務取締役 城野清治きのせいじ

エマルジョン化したナ号の流出油

油のエマルジョン化とは

 油のエマルジョン化とかムース化とかいわれているのは一体何なのでしょうか?何か特別な現象なのでしょうか?実はわれわれは日常生活で常にエマルジョンと呼ばれるものに接しているのです。牛乳、マーガリン、マヨネーズ等これらすべてエマルジョンなのです。
 エマルジョン化(乳化ともいいます)とは、水または油を細かい粒状にして、他方の液体中に安定的に分散させることです。マヨネーズは水中に油の粒子が分散した状態ですし、マーガリンは油の中に水が分散した状態です。
 水と油をかくはんするだけでエマルジョンは簡単にできそうですが、そう簡単なことではないのです。なにせ水と油ですから、混合してもすぐに分散してしまいます。この現象は、サラダドレッシングなどのかくはんでしばしば経験することです。
 エマルジョンができるには、分散した粒子が凝集せず、分散した状態を安定的に保つ工夫が必要です。人工的につくる場合は、両方の液体になじみのよい物質(界面活性剤)を混入させかくはんし、界面(粒子表面)に集める方法が用いられます。

 

 

 

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