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小型漁船用常時着用型安全衣の啓蒙普及講習会

 漁業者に安全衣を常時着用してもらうためには軽くて着やすい安全衣を知ってもらうことがもっとも重要です。平成7年に開発した安全衣を漁業者に周知するため、日本財団の補助金を受け、当センターに小型漁船用常時着用型安全衣の啓蒙普及検討委員会を設置し、平成7・8年の2年間に道内46漁協、3団体約2,500人に対し、各委員を講師として安全衣の啓蒙普及講習会を開催しています。
 講習会は委員会が作製した海中転落防止対策などを内容とした、安全衣啓蒙普及テキスト(B5判、28ページ)と安全衣の水中実験ビデオなどを使い安全衣の特性、特徴等について講習をしています。また、安全衣の試着を行い、軽さ、通気性、作業性の良さを体験してもらったり、プールや海上で浮遊実験をすることもあります。その他、数100人が参加する水救全道大会や漁協婦人部全道大会にも参加し、安全衣の展示、試着、海上での浮遊実験などを行い、安全衣の常時着用を強く呼びかけています。安全衣の啓蒙普及講習会は平成9年以降も天、下井教授や、元委員の協力を得て、当センターが独自に道内の漁協、漁協青年部、婦人部を対象として、年間30回を目標として開催しており、今後も継続する予定です。

安全衣着用の広がり

 当センターの広報紙「北極星」でも安全衣の啓蒙普及特集号を発行し、道内の全漁家に配布し安全衣の常時着用を強く訴えています。
 安全衣の着用については関係市町村も理解を示しており、もちろん全道の漁協も力を入れています。
 このような状況から安全衣の無償配布や購入に助成しているところもあります。救命衣の着用を義務化した漁協もあります。
 現在、道内の41漁協では義務化し、過怠金や操業停止などの厳しいペナルティーを課す規定を設けています。
 これらの動きから、漁民の間に安全衣に対する認識と着用の意識が確実に高まり、着用の輪も大きく広がっています。最近では、各浜から出漁する漁船に安全衣を着用した漁船員の姿が目立つようになっています。こうした動きは、北海道を越えた広がりも見せています。
 北海道・東北漁船海難防止連絡協議会でも安全衣の啓蒙普及と着用について真剣に討議されており、今では東北6県にも普及しています。仙漁船協会も水産庁の委託事業として安全衣的な救命衣を開発し、船舶安全法の適用がない全国の沿岸漁船を対象に啓蒙普及活動を展開しています。

 おわりに

 官民一体とした懸命な努力によって救命衣の着用に明るい兆しがみえたとはいえ、全道的にみれば着用率の低さは否めない事実であり、今なお救命衣の未着用が原因となった死亡・行方不明事故は跡を絶たず、憂うべき状況にあります。
 海難遺児の「写真のお父さんでなく、動くお父さん、遊んでくれるお父さんがほしい」という悲しい声を聞くと、救命衣の着用は海で働く者の義務であり、社会的責任です。漁業経営の健全な発展は安全操業という基盤の上にだけなり立つことを、今一度漁民1人ひとりが自覚すべきではないでしょうか。



常時着用型安全衣講習会(根室漁協)

 

 

 

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