常時着用型安全衣の開発と啓蒙普及
(社)北海道漁船海難防止センター
事業推進主幹
小沼勝郎

筆 者
はじめに
北海道では、船舶安全法が適用しない総?数20?未満で、沿岸から12カイリ以内で従業する漁船に対しても、北海道小型漁船安全規則を制定し、乗組員と同数の救命胴衣の備え付けを義務づけています。ただし、操舵室および全通甲板を有しない漁船は除外されており、補完的なこの規則によっても救命胴衣の備え付けについて、完全を期待することはできない状況にありました。
なぜならば、平成5年における北海道漁船の89%、約37,000隻が5トン未満で、その多くは救命胴衣の備え付けを除外されているからです。そして、海中転落死亡事故がもっとも多いのがこの種の小型漁船でした。加えて近年は、漁業就業者の減少から高齢者の1人乗り漁船が増えており、海中転落死亡事故の危険因子はさらに高くなっていると考えられるからです。
当センターでは、これらの法的に備え付け義務のない小型漁船を対象として、日本財団の補助金を受け、船舶安全法の基準に適合しない浮力を6.5??とした、軽くて作業性のよい小型漁船用常時着用型安全衣を開発しました。そして、この安全衣の啓蒙普及と着用を積極的に推進しているので、この状況と開発の経緯などについてその概要を紹介します。

安全衣を着用して出漁(羅臼漁協)
海中転落事故と救命衣
北海道の漁船海難における死亡・行方不明事故は海中転落によるものが多く、当センターが発足した昭和49年から、平成4年までの19年間に、海中転落で589人、その他の衝突や転覆海難で937人、合計すると死者・行方不明者は1,526人にもなります。この中には、救命胴衣さえ着用していれば最悪の結果とならなかったと考えられるものが相当数ありました。
このような海難状況から当センターでは、第1管区海上保安本部・北海道・関係市町村・漁業関係団体等と力を合わせて「救命衣着用運動」を強力に推進しましたが、救命衣の着用には理解を示すが実際の着用者は少なく、海中転落死亡事故は一向に減少しない状況にありました。

救命衣着用運動(手売島にて)