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漁船の機関故障

主機関の事故例  小型漁船の典型的な機関事故について、具体例を、示し説明します。  
 この船は、総トン数3トンの定置網に使う漁船であり、船令、機令はともに18年を超えています。一般的には小型漁船の機関には公的な開放検査を受ける必要がないことから、一部を除いて開放整備はほとんど行われていまれん。  
 この機関も写真を見ると各部に錆が発生し、整備はよくないと思われます。事故は、洋上での作業中に発生し、機関から異音がして停止しました。そこで、僚船にえい航され帰港しました。  
 事故の状況を調査したところ、潤滑油パイプのろう付け部分に亀裂が発生して潤滑油が漏れて量が減ったために、クランク軸への潤滑油の給油量が減り、クランク軸のピン部と軸受けが焼きつき、クランク軸、連接棒等が損傷したことが分かりました。  
 この機関には潤滑油圧力の低下を感知する警報装置がついていますが、警報はランプだけであり、操船者から見えないところにあったため、機関が停止するまで分かりませんでした。修繕には1週間を要し、損害額は約80万円でした。また、過去の事故歴を調べたところ、数年前にもクランク軸を損傷する事故が発生していました。(写真7・8・9・10)

写真7 主機関の全景

写真8 クランク軸の損傷

写真9 軸受けと連接棒の損傷

写真10 原因となった潤滑油パイプ(保険対象外)

 

 この事故の原因となった潤滑油パイプのろう付け部分は、振動により亀裂が発生したと考えられます。
 このように潤滑油パイプが古くなり亀裂が発生したために起こる焼きつき事故は、かなりの件数になります。また、警報装置が度々作動するのでスイッチを切ってある警報装置の設置場所が悪く操船者が作動に気がつかない、警報装置が古くなり正しく作動しないといったケースも多々見られます。
 では、この例のような事故を防止するにはどうしたらよいか検討してみましょう。
 まず、出港前に点検をします。具体的には、潤滑油量の点検、清水冷却の場合は清水量の点検、冷却海水の船外への排水の確認、潤滑油漏れと水漏れの有無の確認をします。そして、潤滑油と清水が、不足している場合には足します。
冷却海水の排水量が少ない場合には、海水こし器が詰まっているまたは、海水ポンプインペラが破損していることがありますので、こし器の掃除とインペラの点検をします。

 

 

 

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