漁船の機関故障
漁船保険中央会
損害調査部機関調査課
課長
小柳 俊明

筆者
漁船保険
漁船保険は漁船損害与補償法という法律に基づいて行われている制度保険です。この保険には、普通損害保険、船主責任保険(PI保険)、積荷保険などの保険があり、漁船登録を持つ千トン未満の漁船が加入することができます。それぞれ保険には支払い条件がありますが、基本的には、般の保険と同様に不慮の事故により発生した損害が支払の対象になります。
加入漁船
漁船自体の事故を対象にしている保険は、普通損害保険であり、加入隻数は昭和62年度の、25万5千隻をピークに、その後はわずかずつ減少し、平成9年度は約24万3千隻となっています。
その内訳は、5トン未満が約21万4千隻、5トン以上20トン未満が約2万6千隻、、1トン以上、50トン未満が約3百隻、50トン以上100トン未満が約700隻、100トン以上が約1,800隻、無動力船が約500隻となっています。
また、加入漁船の平均船令は約17年と、以前に比べ、船を長く使う傾向となっています。(図1に示した平成8年度の船令別引受隻数から計算すると、平均は約15年となりますので、2年を加算し、17年となります)
図1船令別引受隻数(平成8年度)

主機関の平均機令については、集計していませんので不明ですが、途中で機関の換装される場合もあるものの、機令が長い機関が度々事故を起こしていることから、長年使われる傾向にあることは間違いないと思います。
事故件数・支払保険金額
1年間に支払われる普通損害保険は約7万件、支払保険金額は約220億円となっています。これらの事故の内容を船体関係、機関関係、設備関係、救助、全損に分け、延べ件数にすると、約8万件となり、その内訳は、機関関係(主機関・補機関・船外機・プロペラ・プロペラシャフト等)の件数が68%と圧倒的に多く、次に船体関係が20%、設備関係(電気機器・漁労機器等)が6%、救助が5%、全損が0.4%となっています。(図2)
図2損害区分別事故件数の割合(平成9年度)

事故の概要
船体関係は浮流物との衝突、座礁、荒天中の岸壁との衝突および転覆等による損害等があります。機関関係は、損害区分別損害額においても、65%程度となっており、後に詳しく述べます。
設備関係は消耗部品が多いことから特別の支払い条件がありますが、転覆等による水漏れ、電線のショートによる火災およびソナーと浮流物との衝突による損害等があります。