この種のケースは、般的に相手船が小型船で、その速力差から相手船に被害が大きくなるのがほとんどで、衝突前の見合い関係や操船者の過失等を無視して単に被害の軽重で考えると漁船が加害者となる例といえます。
〈事例2〉
平成9年6月21日16時ごろ、漁船C丸(1トン、1人乗組)は刺し網を投人後に漂泊し、船長が船首部で漁獲物の選別をしていたところ、自動操舵航行中の貨物船D丸(1.205、105トン、6人乗組)に船尾から衝突され転覆、海中に投げ出された漁船C丸船.長は船底にしがみついて漂流しているところを約2時間半後に僚船により発見・救助された。一方、貨物船D丸は衝突に気づかずそのまま航走を続け、目的港入港後に海上保安庁に捕捉された。
この事例は、漁船の船長が作業に没頭したため相手船の存在に気がつかなかったもので、昼間の視界が良い状態であったことから、他の通航船舶が避けてくれるであろうとおく断し、見張りを全くしなかったのが原因です。
こうした事故は、漁船が底引き網など操縦が制限される漁具を使用しているときにも多く発生しています。
この種のケースは一般的に相手船が大型船で、その大きさ、船質および速力に差があるため漁船側に被害が大きくなるのがほとんで、衝突前の見合い関係や操船者の過失等を無視し、単に被害の軽重で考えると漁船が被害者となる例といえます。
漁船海難の海難種類別

おわりに
以上のように、衝突事故の原因のほとんどは見張り不十分などの人為的要因であり、これは本人の安全意識の問題であることから抜本的な海難防止対策としても「見張りを励行し運航しましょう」と訴えるしかありません。
よって、漁業者の皆さん方は、周囲の状況を良く把握し、操業海域や漁業形態などにより、どのような状況のときに見張りに対する注意力が散漫になるか、また見張りをさまたげる要因は何かを十分に認識し、安全な航行・操業に心掛けてください。
また、平成11年5月には5級小型船舶操縦士の資格が創設されることとなっており、この資格は5トン未満の船舶が海岸から、1カイリまで航行できる資格で、昨今の艇の小型化・低廉化も相まって、ますます小型のプレジャーボート活動の活発化が予想されるところです。
こうしたことから、沿山『海域を航行する際には、今まで以上に注意が必要となりますので、他のブレジャーボート等の存在を念頭において、〈事例1〉のような海難で加害者にならないよう十分気をつけて航行してください。
また、〈事例2〉のように、特に操業中には被害考となることも十分考えられますので、自分たちの身を守る意味でも「見張りの励行」に心掛けてください。