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漁船衝突海難の代表的な事例

 前項で漁船衝突海難の特徴として出ている、沿洋で小人数乗組の小型漁船が見張り不十分により発生した海難のうち、代表的な事例を紹介すると次のようになります。

〈事例1〉
 平成9年4月7日12時40分ごろ、漁船A丸(19トン1人乗組)養殖いかだを増設するため定係港を出港し自動操舵にて約12ノットで航走中、船長が船橋内での作業に気をとられ、前方の見張りをしなかったため、錨泊して遊漁中のブレジャーボートB丸(2トン3人乗組)に気づくことなくこれを乗り切ったもの。
 衝突によりプレジャーボートB丸の1人が死亡、1人が重傷を負った。

 この事例は、漁船の船長が作業をしながら自動操舵でフルスピードの状態で航走させたため、錨泊して遊漁中の小型ボートの存在に気がつかずに衝突したもので、普段から通り慣れた海域であることから、錨泊している船舶が存在しないものとおく断し、全く見張りをしなかったことが原因です。
 こうした事故は、漁船の出港時や帰港時の航走中に発生することが多く、出港町には操業等の準備のための作業、帰港時に漁網の手入れや漁獲物の選別等の作業のため、船橋を無人にして航行するなど極端な事例も散見されます。

漁船衝突海難の細分類

 

 

 

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