特集 漁船海難の状況と傾向
原因は圧倒的に多い見張り不十分
海上保安庁警備救難部航行安全課
はじめに
海上保安庁が集計した平成9年度年における海難統計において、台風および異常気象下を除く要救助船舶隻数は1,665隻で、それに伴う死亡・行方不明者数は、161人となり、海難の隻数および、死亡・行方、不明者ともに昭和18年以降で過去最少となっています。
一方、船舶用途別の状況としては、漁船の海難は591隻とプレジャーボート等に次いで多い隻数となっています。
それまでは漁船の海難隻数がワースト1の座を占めていましたが、平成9年になってそれまでワースト2であったプレジャーボートに抜かれ、その不名誉な地位を明け渡したものの、死亡・行方不明者数では108人と依然として一番多く全体の67.1%を占めています。
船舶用途別の海難隻数の推移
(台風および異常気象トのものを除く)
漁船海難の特徴
漁船は、運航に加え、通常の船舶としての運漁業という経済活動を伴うことから、安全性よりも経済性が優先される傾向にあり、また、般船舶に比べて乗組員にかかる肉体的、精神的負担は大きく、特に1人乗りの小型漁船にあっては、船舶の運航、操業の準備、操業等の作業をすべて行うため、乗組員1人にかかる負担は計り知れないものがあります。