このひと/生明 登
〈プロフィル〉昭和10年生まれ、千葉県出身、
昭和34年東京水産大学卒業、
全国漁業協同組合連合会入会、指導部長、
海苔海藻部長、漁政企画室長などを経て、
平成4年6月から現職。
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全国漁業協同組合連合会
常務理事
生明 登
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―わが国漁業の現状の概要を。
生明 現在世界の漁獲量は約1億2千万?、うち中国が約3千万?で一位、日本は約740万?(水揚金額2兆2千億円)で4位です。日本は昭和60年までは千2百万トンで常に1位でしたが、いわしなどの資源の激減により漁獲量が大きく減少しました。
―そのうち沿岸漁業は。
生明 わが国の沿岸漁業は漁船漁業と養殖漁業に?かれますが、漁獲量で740万?のうち320万トン(1兆2千億円)を占めています。
―漁業就業人口は。
生明 平成元年に38万人いた漁業就業者は、現在では28万人に減り、さらに減少を続けています。また、高齢化の問題もあり、現在60歳以上が全体の3分の1を占めています。
―今後の漁業の問題点は。
生明 わが国の水産物の自給率は60%を割っています。これまでは養殖漁業が順調に伸びてきましたが、漁場環境の悪化や輸入水産物の増加による魚価の低迷もあって頭打ちの状況です。
今後の水産食料の確保のためには、いつまでも外国からの輸入に依存はできないと思います。したがって、動物蛋白の40%を水産蛋白に求めているわが国としては将来深刻な問題となります。このためわが国としては200カイリ内における“つくり育てる"漁業と資源管理型漁業推進を柱として強い漁業の生産体制を確立する必要があると考えます。
―漁船海難の現況について。
生明 最近の漁船海難の発生件数は概ね横ばいです。また、死亡事故は若干減ってきているものの労災と海難を合わせると年間百人以上でまだまだ多い状況です。
事故の種類は、転覆・衝突・転倒・はさまれ巻き込まれなどが多く、これらの事故につながる要素として?自然の条件によるもの?乗組員の健康管理、精神管理の不徹底、専門技術の熟練不足等によるもの?漁船、漁具、器材等の管理不備(養殖業等では漁場環境の未整備等によるもの)が挙げられます。また、?高齢化が事故につながりやすい?夜間の無理な操業?1人乗り操業なども事故の要因と考えられます。
―海難事故防止対策は。
生明 漁業災害は漁業の安定的な存続のためにも大きな問題で、従来から漁協組織は海難防止のために関係機関のご協力を得ながら事故防止運動を展開しています。今後は?自然の環境の克服のための科学的情報の把握と情報体制の整備?心身両面での健康管理の徹底?技術の習熟訓練、漁船、漁具、器材また、漁場における点検整備の励行?関係行政、団体、漁協組織が連携しての総合的な事故防止対策の取り組みなどが必要です。
―苦労談等がありましたら。
生明 この問題については、漁業組織の中でも地域差が大きく、全国的になかなか浸透しない点です。そこで全漁連では、昨年から全国運動にするため全国会議を開催しているところです。
―今後の抱負を。
生明 漁業者自らが安全対策が大切だという共通の意識にたって海難防止運動を全国的な運動として発展させていきたいと思います。
また、国民の期待に応える“安全で美味しい水産物の供給”に向けて、とにかく漁業が元気を出して、地域の活性化の要として強い漁業、漁村の構築を目指して頑張りたいと思います。(平成10年10月14日、全漁連役員室で、聞き手=村上)
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