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新刊紹介

キャプテン
ジェイムズ・クックの生涯

J・C・ビーグルホール著
佐藤皓三訳

 今から、200年前のヨーロッパでは、古代ギリシャの哲人が説いた現在のオーストラリアよりも広大で豊かな楽園「知られざる南の大陸」が南太平洋にあるとまだ信じられていた。
 この探検競争に出遅れていたイギリス王室が夢を託した切り札は農場の日雇労働者の息子として生まれながら、ロイヤルネービーの艦長に駆け上がったジェイムズ・クック。

 1768年にエンデバー号で船出して以来、3度目の世界周航を行い、当時ようやく決定できるようになった「経度」を使った測量技術で、太平洋に散らばる島々の正確な地図を作り上げた。
 そのため、クックの後に船出したフランス探検船は「クックの後に何もなし」と嘆くほどだった。クックは世界地図の空白を埋めると同時に「南の大陸」伝説を崩壊させ、彼自身も自ら発見したハワイで壮絶な死を迎えた。そして200年続いた大航海時代は終わった。
 クックは沈着冷静にして大胆、科学的な航海で克明な報告書を作った反面、個人的な感情、私生活の記録を意識的とも思えるほど残さなかったらしい。
 訳者の佐藤氏は、昭和39年に東京水産大学を卒業し現在は外国航路の船長。平成元年に寄稿したオーストラリアの書店で原書を手にした。当初は乗組員への賞料として部分的に訳していたが、これにあきたらず、訳者自身もクックが航海した太平洋のほとんどを航海した経験があることから3年掛かりですべてを楽しみながら翻訳したという。

(成山堂書店)

 

 

 

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