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旅客船等訪船指導
訪船アドバイザー
山田昌利


山田 昌利氏

 各船社は船舶の安全運航について、運航管理手順書等を作成し、各船はそれに従い安全運航に努めています。しかし船舶事故は約7〜8割がヒューマンエラーに起因しているといわれています。
 例えば衝突事故の際、当直航海士から船長へ早めの報告がなされ、船長から当直航海士ヘアドバイスがあれば衝突を回避することができます。
 また、各機器についても、機関長への現状報告がなされ、機関長から機関士へ整備についてアドバイスがスムーズに行われていれば、機関事故を防ぐことができるでしょう。
 このような状況から、船内コミニュケーションおよび小生が各国で受けたポートステートコントロールを参考にしながら訪船指導をしたいと思います。



“ゆにこん”で得たもの
日本財団 海洋船舶部 
業務課 福田英夫 


福田 英夫氏

 私は、海の安全を確保するために実施されている訪船指導を見学するため、青森〜函館間を運航する“ゆにこん”に乗船しました。
 この4月、海洋船舶部に配属になり、海難に対する専門性を持ち得ない私にとっては、海難とは暗く悲惨であるという認識しかなく、かつ私が見学した訪船指導は旧青函連絡船「洞爺丸」の事故現場である津軽海峡航路において実施されたことから、その事故風景が鮮明に脳裏に描写され、より一層海難を否定的にし、暗いイメージを持ったまま訪船指導に臨んだのです。
 “ゆにこん”は技術的・芸術的に優れた旅客船です。その船橋にあるレーダーは、凪が良ければ船の前方を横切る海鳥でさえ映し出す優れたもので、実際に目の前を飛ぶカモメがレーダーに映し出されるのを見て、群れをつくって飛んでいたら確認することが大変だろうと余計な心配をしたほどです。
 また、運航に際しては、レーダーのみに頼るのではなく、自分の目で確認したり、呼称確認するなど全員が一致した安全運航を実践していました。
 しかしながら、船舶・海運の技術が向上し、気象予報がより正確に予測できたとしても実際にナホトカ号やダイヤモンドグレース号のように近年においても事故は起こっています。
 この訪船指導では事故の要因をヒューマンエラーにあて「高速船の運航とヒューマンエラー」について、「人間のからだの構造」と「高速による人間のカラダの機能の変化」などを具体的に説明してくれました。
 これは船舶だけでなく、自動車を運転したり、または自転車においても同じことです。私は自動車を運転しますが、交通法規を順守し、性能の良い自動車を運転したとしても、体調が悪ければ当然のことながら、安定した運転はできず、危険性は高まります。また、私の場合、スピードにより生じる危険性に対する緊張感が負荷されます。“ゆにこん”は高速航行しているため、外的要因による危機回避を考えると、より神経に負担ある操船作業ではないかと操船していない私までもが圧迫される思いでした。
 また、通常、私たちの生活においての動作と突発的な事故の危機回避における動作とは異なるものがあり、突発的な危機回避の際に自分の意思とからだは連動するのかということについても説明がありました。このように、実際に操船作業やアドバイザーからの指導を見ていると、海難とは惨事のみをいうのではなく事故を起こさないよう努めることも広義の海難ではないかと思うと共に海難に対する考えを改める体験となりました。

 

 

 

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