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“ゆにこん”訪船記

訪船アドバイザー
橋本 進


橋本 進氏

 平成10年6月25日、東日本フェリー?が運航する青森〜函館間の高速フェリー “ゆにこん” (1,498総?、35ノット)に訪船アドバイザーとして乗船する機会を得た。
 せっかくの機会だから、前日の朝青森に行き三内丸山遺跡を見学した。
 かつて、佐賀の吉野ケ里遺跡を見学したことがあるが、この両遺跡は北と南の距離的にもかなり離れた土地にありしかも約3000年の年代差がありながら、復元された竪穴住居・高床倉庫など両者の外観はあまり変わっていない。吉野ヶ里遺跡では内濠に囲まれた中心部に立つ物見やぐらの巨木に驚いたが、ここ三内丸山遺跡の大型堀立柱建物の巨木には圧倒された。
 縄文人や弥生人はこの巨木を一体どのような方法で立てたのであろうか? 何千年も隔てられながら、案外同じような方法―あるいは似たような発想だったのかも知れないな―。時代の流れのなんと悠々たることか!
 それにしても、今の時代の流れのテンポは一体どうなってんだ! などなど想いをめぐらしながら青森の宿に帰り翌日の“ゆにこん”乗船に備えた。
 さて船舶交通の高速化は船舶運航のイメージを大きく変えたが、特に操縦者の船橋内シートヘの固定化は航空・陸上交通機関の操縦者なみとなり、船橋内諸設備も大きく変わりつつある。
 高速フェリー“ゆにこん”は「シップ・オブ・ザ・イヤー97」を受賞しただけあってあらゆる面でユニークである。特に船橋内の設備・配置にはむしろ奇異な感じさえ受けた。
 まず操縦関連機器類の配置である。そのパネルは操縦者の眼前左右に広がっており、前面の窓枠とあいまって船首から下方の見張りを著しく妨げているのである。もちろんシートの高さを調整すればよいといわれるかも知れないが現実に操縦者は常に立ち上がって見張りをしている。ということは、そうしないと見張りの盲点をカバーできないのである。
 次は操縦レバーであるレバー方式による操縦は「ゲーム機」的な現代感覚―操縦者は1人であるから使い勝手をよくする一によるものであろうか?ここで「レバー方式」を取り上げたのは、その善し悪しではなく、ジェットフォイルの出現以来、一人操縦は操縦者の意図が周囲の人たちにわかり難く、周りからのフォローがし難いという現場の声があるからで、器械と操縦者を含めた複数の当直者間のコミュニケーションをどうするかの問題をもう一歩進めて考えて欲しかったからである。
 話は少し古くなるが、1988年アメリカの「NASA」が発表して注目された「自動化の原則」を紹介して、ゆにこん訪船の感想としたい。

〔してはならないこと〕
(1)作業者が特有のスキル(技術)、生きがいを感じている仕事を自動化するべからず。
(2)非常に複雑であるとか理解困難な仕事を自動化するべからず。
(3)作業現場での覚醒水準が低下するような自動化はするべからず。
(4)自動化が不具合なとき、作業者が解決不可能な自動化はするべからず。

〔なすべきこと〕
(1)作業者の作業環境が豊かになる自動化をせよ。
(2)作業現場の覚醒度が上昇する自動化をせよ。
(3)作業者のスキルを補足し、完全なものとする自動化をせよ。
(4)自動化の選択、デザインの出発点から現場作業者を含めて検討せよ。

 

 

 

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