日本財団 図書館


“ゆにこん”の要目

 ここで“ゆにこん”の要目などについてふれてみよう。
 1997年建造、同6月から青森〜函館航路に就航、2時間で青函を結ぶ、1,498総トン、船の長さ100?、見た目にはトン数より大きく見える。乗客定員は420人、最大搭載車両数は乗用車105台(高速のためトラックや大型バスは搭載しない)。
 エンジンはドイツのベンツのジーゼル8,840馬力×4基、燃油はA重油を使っている。ベンツといえば車では高級車として国内でも結構多く見られるが、舶用のエンジンとしては国内ではじめてとのこと。
 とにかく1,500トンの船に8,800馬力が4基というのはものすごい。1トンについて23馬力、よくトン馬力といって船のトン数と同じ位の馬力であればそこそこの速力が出るものだが、その23倍の馬力には驚いた。
 航海計器は、ARPA(衝突予防装置)を組み込んだレーダー2台が主力でそれほど新しい装備は見られなかった。この地区では海上保安庁が手掛けているDGPSがまだ設置されていないせいで電子海図が装備されていないのかもしれない。しかし、この航路ではこの装備で十分だと思った。


見張りなど


航行中の船橋では4人で見張る

 乗組員は11人、船長を含む甲板部6人、機関部2人、事務部3人(男子1人、女子2人)。航海中の当直は、船橋当直として船長、甲板部3人、機関長の5人、機関室は1機士が点検作業を行うが、船橋にもきて機関長と交代する。
 見張りという視点でみると、船長と航海士、甲板手合わせて4人の目が真剣に見張っている。また、エンジンについては、コンソールに集められた各種指示器を常に機関長か機関士が監視している。これなら航海の安全は心配ないと確信した。客室を預かる事務部は、売店を2人で担当、必要に応じて案内放送も受け持っている。また、客室内の安全にも気を配らなければならない。


船長の話


佐藤 徹船長

 船員歴33年、船長歴18年というベテランの佐藤徹船長に聞いてみた。
「本船の艤装1年前にフランス、イギリス、アイルランド、ドイツ、デンマーク、ドバーなどで6隻位の高速船の航走を視察しましたが、これが大変ためになりました。本船の就航した最初のころは緊張しましたが、ヨーロッパでの視察が生かされたと思います。
 本船が高速船ということで、一般の方には危険度が高いと受け止められているようですが、高速船には相手船を避けやすいという大きな利点もありますので、決して危険なものではありません。
 ただ、就航前のシミュレーターでは問題がなかったはずの引き波(自船が航走することによって起こす波)が及ぼす問題がありました。特に陸奥湾のような入り組んだところには大きい波となって押し寄せるようでして、マリナー関係などから苦情が寄せられ、いまではそういう所の沖合を航走するときは、スピードを落として問題が起きないようにしています。
 それから、この海域には、漁業者の雑縄がたくさん入れられていて、そのぼんでん(縄や網がどこにあるかを示す印で、竹ざおや浮き玉などを使うが、最近では発砲スチロールのトロ箱などの廃品利用が目立つ)が無数にありますが、本船の船形では万一ぼんでんの真上を通過しても漁具に損傷を与えることはありません。この点はよかったと思います。


入出港時にはジョイスティックハンドルで船長が操船する。

 

 

 

前ページ    目次へ    次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION