北の女王“ゆにこん”を訪ねて
濃霧の中を青森港に着桟する”ゆにこん”
青森〜函館間(113??)を2時間で結ぶ東日本フェリー?の超高速フェリー“ゆにこん”に乗船、往復の航海を体験した。
在来船にない超高速船の特徴や安全維持にどのように心掛けているのかを取材するという目的のほかに、日本造船学会から技術的かつ芸術的に最も優れた船に贈られる「シップ・オブ・ザ・イヤー97」に輝いた同船に対する興味にも大きいものがあった。
“ゆにこん”に乗船
平成10年6月25日午前10時40分、青森港に東日本フェリー株式会社の誇る青函航路の超高速フェリー“ゆにこん”は、この時期に多い濃霧の中にブルー基調で化粧したスマートな船体を現し、事も無げにスムーズに専用岸壁に着桟した(事も無げにといっても船長はじめ乗組員には大変な緊張のなかでの着桟作業だったことは申すまでもないことだが)。
函館からの乗客と車両が降りた後、会社の方に案内されながら待望の97年のシップ・オブ・ザ・イヤーに輝いた“ゆにこん”に乗船した。
この日は、日本財団の補助事業の一つである「海難防止訪船指導」実施のため、訪船アドバイザーの橋本進氏(元東京商船大学教授)、山田昌利氏(日本船長協会常務理事)、さらに視察の日本財団福田英夫氏(海洋船舶部業務課船舶係長)と同乗した。
船首から見たスマートな ”ゆにこん”
舵輪がない?
船長に挨拶の後、コックピットスタイルの船橋内に目を見張る。まず船には必ずあるはずの舵輪(スティアリングホイル)がない。そのかわりジョイステックという棒状のものがコンソールの真ん中付近と両舷についていた。このステックで船の針路を操作するとのことで、普通の船のように船尾に舵がなくジョイステックの操作でウォータージェットの角度を変えることによって針路を変えるという。
あれこれ物珍しく見ているうちに正午前出港スタンバイとなる。霧は朝よりは薄くなっている。
11人の乗組員がそれぞれの持ち場につく、船長が岸壁側のウイングにあるジョイステックハンドルで“ゆにこん”を操る。船長1人でエンジン、針路、バウスラスターを操作するわけで、いってみれば航空機の操縦桿を握る機長のようなものだ。
船はあっという間に離岸して針路を函館に向ける。青森港口で入港しようとする他社のフェリーとVHFでお互いの針路を確認しあって安全を担保する。これも重要なコミニュケーションだ。
青森港口の灯台を通過すると35ノット(約65??)の高速運航に入る。大きな馬力のウォータージェットの推進方式故かスピードアップが早い。5〜6?の風で波も小さく快適な乗り心地だ。
コンソール型の船橋に蛇輪がない。手前が機関長、その向こうに船長と航海士の姿が見える
船首から見た”ゆにこん”
前ページ 目次へ 次ページ