ロンドン連絡事務局便り
IMOの紹介
今回は、国際海事機関(IMO)を紹介します。
ロンドンが世界の海事センターである由縁も、IMOがここにあるからというのが正直な感想です。かつて、世界の海を制覇した海国は、IMOをこの地に置くことで、かつての栄光の日々をしのんでいるのかも知れません。
テームズ川対岸から望むIMO本部
(向かって右側、旗のある建物)
IMOは、国際条約に基づいた機関で、1958年3月17日に発効した政府間海事協議機構(IMCO)として知られ、第1回総会は1959年1月6日に開催され、新しい組織として発足しています。現在のIMOに変わったのは、国連の下部組織としての条約変更が発効した1982年5月22日のことです。それ以後発展を続け、現在では155ヵ国、2地域の締約国を有し、国際海運、海上安全、海洋汚染の防止等の分野で世界標準となっている条約、規則等の政府間協力に対する組織として機能しています。
構成としては、2年に1回開催される総会、32カ国の理事国から構成される理事会、機能の中心的役割を果たす海上安全委員会、海上の法的側面を取扱う法律委員会、環境問題を取扱う海洋環境保護委員会、技術協力問題を扱う技術協力委員会、国際海運の不要な手続を簡易化するための簡易化委員会、これらは招集された時に開催され、また、ほとんど年間を通してこれら委員会の下部機構として機能する種々の小委員会が開催されて、これらの会議を行なうためにロンドンに事務局を置いています。事務局は、カナダ人のウィリアム・オニール事務局長以下300人近い職員で、本当に種々の国籍の人々で構成されています。
IMOの主要な機能として各種条約の作成がありますが、現在すでに40の条約、議定書が採択され、そのほとんどが発効している状態です。
主要なものとして、海上人命安全条約、海上衝突予防規則条約、船員訓練資格証明当直条約、国際捜索救助条約、海洋汚染防止条約、国際油濁補償基金条約、油汚染準備対応条約等重要な条約が目白押しで、またこれらの条約に基づき、コード、勧告といった形で種々の国際標準を形成しています。
この機関での会議には、日本からも多くの会議出席者があります。日本は、理事国として同機関での拠出金第3位の国として、大海運国・造船大国として、海上安全をリードする国として会議において種々の貢献を行なっています。
私の主たる業務は、同会議への出席、対処方針の反映および結果の報告、その他情報収集といったことです。世界の海事センターでのこれらの会議では、本当に教えられることが多いと常々思っています。
会議で検討されたことは、今後は国内に還流していくものと考えていますので、将来的な糧としてロンドンでこれらの会議に参加できたことは、人生のひとこまとして非常に有意義であったと感じている次第です。
(大和秀一記)
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