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 近年のアビキの発生状況

 長崎検潮所が観測を開始した1961年から1996年までに発生した全振幅80センチを超えるアビキについて、その最大全振幅と年毎の発生回数を図3に示します。
 1979年に全振幅278センチ(前述のアビキ)、1988年に全振幅217センチの大きなアビキが起こっていますが、1989年以降は150センチを超える大きなアビキは起こっていません。
 また、全振幅80センチ以上のアビキは年に数回(平均4.6回)100センチ以上のアビキは年に1回以上(平均1.5回)の頻度で発生しています。そして、1960年代〜1980年代と比べて1990年代に入って全振幅80センチ以上のアビキ、全振幅100センチ以上のアビキともにわずかに増加しています。
 図2には長崎検潮所で観測された全振幅80センチ以上のアビキの月毎の平均発生回数を年代別および全期間に分けて示してします。アビキは12月から3月にかけてよく発生していて、1970年代以降は3月の発生回数が飛び抜けて多くなっています。

〈図2〉 長崎湾のアビキの月別平均発生回数(全振幅80?以上)

〈図3〉 長崎湾のアビキ最大全振幅(80?以上)と年間発生回数

おわりに

 以上のように、近年は大きなアビキが起こっていません。これが気候変動によるものなのか、長崎湾の埋め立て等の工事の影響なのか、それともたまたま起こらなかっただけなのかは、分かっていません。それ故、これからも大きなアビキが起こる可能性があります。
 長崎湾およびその周辺で仕事・生活されている方は、これからも注意を怠らないようにしてください。

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〈参考資料〉
赤松英雄(1980年)長崎港のあびきの話、福岡管区気象台技術通信第26巻第1号
赤松英雄(1982年)長崎港のセイシュ(あびき)、気象研究所研究報告第33巻第2号
西部海難防止協会(1982年)津波(長崎港アビキ)対策調査委員会報告書
日比谷紀之・梶浦欣二郎(1982年)長崎湾におけるあびき現象(湾内の大規模なセイシュ)の発生機構、日本海洋学会誌第38巻第3号
半沢洋一他(1989年)長崎湾の巨大アビキ、沿岸海洋研究ノート第27巻第1号
小長俊二他(1990年)長崎湾のあびきについて、海と空第65巻第4号

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訂正
「海と安全」7月号の海の気象、(台風の高波)30ページの二段目、終わりから行目、
「…に一つは有義波の約2倍…」とありますが、次のように訂正します。
「…に一つは有義波の約1.6倍、1000波に一つは有義波の約2倍…」

 

 

 

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