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明治期灯台の保全

      歴史的灯台世界百選に5基


 海上保安庁が管理している灯台で、明治年間に建造され、現在も現用の標識としてその機能を保持しているものは全国に68基あります。
 これらの灯台は、構造物としての耐用年数もすでに超過し、多くの灯台は保有耐力が懸念されるため、構造補強を必要としています。
 近代日本の黎明であった明治期に建造されたこれらの灯台は、航路標識としての機能とは別に、歴史的・文化財的・建設技術的に、あるいは地域のシンボルとして貴重な価値を有するものが多くあります。
 このため、明治期に建造された灯台施設を広義の文化財ととらえ、日本の建築界、産業考古学の権威および有識者で構成する「灯台施設調査委員会」を設置し、昭和60年から3ヵ年に渡り調査を行い、灯台施設個々に価値評価を加え、A〜Dまでのランク付けを行いました。
 この中で、AおよびBランクの灯台(33基)を「特に価値評価の高い建造物」として位置づけており、評価の高いAランクの灯台は、全国に23基あります(名称は末尾に掲載)。
 明治期灯台の整備は、原型を保全することを前提に、特に評価の高いA・Bランクの灯台施設については、学識経験者等で構成する「灯台施設保全委員会」を設置して、保全のあり方を諮問し、平成9年度までに12基について適切な保全を完了しています。
 また、平成10年6月にドイツのハンブルグで開催された第14回国際航路標識会議において「世界各国の歴史的に特に重要な灯台百選」が紹介され、わが国からも前述のAランクの灯台の中から5つの灯台が選ばれました。
 国際航路標識会議は、航路標識および海上交通管理業務の向上と調整を目的に設置された国際機関である国際航路標識協会(IALA)に加盟している国等の会議で、日本は昭和34年から参加しています。

 それでは、世界百選に選ばれた5基の灯台を紹介しましょう。

神子元島灯台(みこもとしま)=静岡県下田市
 石造りとしては、わが国に現存する当時の姿をそのまま残している最古の灯台で、設計者は日本灯台の父であるR・H・ブラントンです。慶応2年5月に江戸幕府が米・英・蘭・仏の4ヶ国と改税約書(江戸条約)を結んだ際に整備を求められた8灯台の1つです。(明治3年11月11日点灯)


神子元島灯台


 犬吠埼灯台(いぬぼうさき)=千葉県銚子市
  レンガ造りの建造物としては日本一の高さを誇っています。
 設計者は神子元灯台と同じブラントンです。(明治7年11月15日点灯)


犬吠埼灯台


姫埼灯台(ひめさき)=新潟県両津市
 鉄造りとしては、わが国に現存する当時の姿をそのまま残している最古の灯台です。新潟から佐渡島へ向かう船を最初に迎えるのがこの灯台です。(明治28年12月10日点灯)


姫埼灯台


 美保関灯台(みほのせき)=島根県八東郡美保関町
  灯塔は石造りであり、外観は石の肌も荒々しく美しい姿を残しています。(明治31年11月8日点灯)


美保関灯台


 出雲日御碕灯台(いづもひのみさき)=島根県簸川郡大社町
  灯塔は石造りであり、灯塔の高さとしては43.65?と日本一を誇っています。


出雲日御碕灯台


〈歴史的・文化的価値評価の高い灯台23基〉
 神子元島灯台▽江埼灯台▽友ヶ島灯台▽鍋島灯台▽部埼灯台▽菅島灯台▽釣島灯台▽犬吠埼灯台▽御前埼灯台▽金華山灯台▽尻屋埼灯台▽角島灯台▽潮岬灯台▽禄剛埼灯台▽鞍埼灯台▽男木島灯台▽姫埼灯台▽美保関灯台▽経ヶ岬灯台▽室戸岬灯台▽出雲日御碕灯台▽水ノ子島灯台▽清水灯台
(海上保安庁灯台部)

 

 

 

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