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岡本 うまい。うまい。海のプロの世界だったところへ、ある意味では海の素人であるプレジャーボートの人が入ってきたところに問題があるのでしょう。

沼田 また土・日曜しか海に行けないから、無理して遊ぼうということも事故の原因になるのでしょうね。

岡本 マスコミもおかしいのです。漁船の遭難とかは通常の職業としての活動の1部と思うせいか、小さな扱いで、ヨットレースなどで遭難が起こると大々的に報道します。
 これはこのような傾向に警鐘を鳴らす意味で大きく取り上げるのならよいのですが、海で働いている人たちをあるべき比重で見ていない気がします。派手な遊びの方にばかり焦点を当てている気がします。
 私は、水上オートバイは好きではありません。マナーに問題があり、また騒音も迷惑となっています。航行区域を区切ってほしいと思います。
 ヨットが好きなのは、人様にあまり迷惑をかけない点です。人を傷付けることはないし、風と波だけでひたひた走り、静かです。

潜る楽しさ

沼田 ところで岡本さんはダイビングをなさるとか。私も潜りたいのですが、なかなか機会がなくて……。
 ヒットラー時代のベルリンオリンピックの映画監督をなさった元女優さんのレニ・リーフェンシュタールさんという今96歳になられる方がいます。この方は70歳のときに潜るライセンスを取り、海の中を撮影して日本でもすばらしい写真展をしました。その写真展でお目にかかったのですが、80歳をすぎていると思えない美しさで海の成分が若々しくしてくれるのではないかと思いました。この方は陸にいるときよりも海にいるときの方が生き生きしているそうです。海の中の方が自由に動けますからね。

岡本 外国では、70、80近い高齢者まで潜っています。うらやましいですね。一緒に潜るガイドとかは徹底的な教育を受けているのですね。ですから潜る人のライセンスはそんなに厳しくなくても一緒に連れて行く人が完全に安全を確保したうえで海に親しませようというのです。それから潜る人は絶対に海の中の物を壊したり、珊瑚を折ったり、まして物を捕ってくるとかしません。次の世代にそれを継承しましょう、という意識が非常に強いですね。

沼田 私も足腰の立たなくなる前に潜りを覚え、写真を撮ろうかと思っているのですが。

岡本 沼田さんにはぜひすばらしい写真を海の中で撮ってもらいたいですね。私も写真を教えてもらいたいです。海中では被写体も撮影者も揺れているので撮るのはむずかしいのですよ。ただ色彩が豊かでコントラストもあるし、ものめずらしいということでごまかせるのです。
 だから陸上写真のプロの目から見るとほんとうにあまいと思います。例えばプロが撮った海中写真のなかにも……。
 沼田さんの写真はモノクロで芸術的な写真ですね。私も海の中でモノクロ写真を撮ってみたいです。そう、夜の海はいいですよ。漆黒で暗室にいるのと同じです。しかも浮力があるので上下がわからないくらいです。
 紅海で潜ったとき不思議な魚を見ました。ヘッドライトみたいに30?くらいの発光体がついていて、発光体から光が中へ延びています。ちょうど暗い道を自動車が行くような格好で、2条の光がその魚の行く手にずっとついているのです。それが50匹、60匹と洞窟の中で動いているのです。このような幻想的な世界はないですね。水の中をサーチライトが二条になって光るのです。青い蛍光色です。この世のならぬ幻想的です。

沼田 潜って写真を撮ってみたいですね。

 

 

 

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