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沼田 主人は福島でどちらかといえば山の方。わが家での比較ですが主人は古いものがすきで、友達とは狭く深く付き合い我慢強い方で内向的です。私は新しいものがすきで、友達とは広く浅く付き合い我慢せず外向的なので、これは小さいときの環境が影響しているのだと思います。

岡本 海は人の警戒心をとって心のわだかまりも捨てさせ、人を解放する作用があると思います。その反対で山の人は閉鎖的だというイメージができてしまって、こういうと山の人は怒るでしょうが。

沼田 ヨットとか海上保安庁の観閲式などを見させていただくと海の人は硬派だという感じがします。
 海は板子1枚下は地獄といわれますように、ちゃらちゃらしてはおられないからという気がします。あの緊張感が好きです。ヨット部もきりっとしていいですよ。

岡本 母校の一橋大学ではヨット部はできたばかりでした。今は国公立戦などでもいい成績を収めますが、当時はボロ舟ばかりでした。
 ボートは沈むことを“沈”(ちん)といいますが、ヨットは操作を誤ったりすると、普通は横に倒れるのですが、私たちのヨット部の“沈”は水がもれてきて垂直に沈むのです。そうすると海に飛び込んで助けを呼びに行ったり、引っ張ってもらうのに水中に潜ってロープをくくりつけたりするのが私の役目でして、全然かっこいいものではありませんでした。あまり華やかな思い出はないですね。
 自分でもヨットがほしくてアルバイトしてお金を貯めて、親からも借金して東京商船大学が廃船にするというヨットを、当時12万円で買いまして大切に乗っていました。
 それ以来何となく自分のそばに舟がほしくて、今も小さなヨットを持ち続けておりますが、もう何年も乗っていないのです。乗っていないのですが、メンテナンスをして料金を払って、毎年手続きをしております。いいかげんでやめたいと思うのですが、舟とかかわりが気持ちの上で切れないのです。
沼田 いいですよね。しかしもう乗っていないのですか。乗る決心がつかないのですか、それとも乗る時間がないのですか。

岡本 職業で船に乗っている人は別ですが、われわれのように遊びで船に乗ろうという人は、完全に週休2日でないとだめですね。1日休養して1日船に乗る。忙しい人は2日のうち1日はなんだかんだでつぶれますし、出張などしますとウィークエンドは移動日にかかりますし、1日だけで海に行くというのは大変です。1人では乗れませんし、仲間と連絡をとらなければいけませんので。

沼田 そうですね。無理して行って事故でも起こしたら目も当てられませんね。

岡本 船にはよくお乗りになりますか。

沼田 船を持っている友達がいて時々乗せてもらうだけです。若いころにはよくお呼びがかかりましてヨットには乗せてもらいました。8人くらい乗れるようなヨットで、ちょっと沖へ出てご飯を食べて帰ってきました。

岡本 さぞかしもてたでしょうね。

沼田 昔はね(笑)。


プレジャーボートの海難


岡本 ところでヨットもプレジャーボートですが、昨年はプレジャーボートの海難がトップになったということで、大変に残念なことです。海に対してもう少し謙虚になってもらいたいと思いますね。

沼田 教育がないのでしょうか、マナーがないのでしょうか。他の船に迷惑をかけてはいけません。船はやっぱり硬派じゃないといけないのですよ。軟派じゃだめです。軟派だと難破船になってしまいます(笑)。

 

 

 

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