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創立40周年を祝して

海上保安庁 
長  官   
楠木 行雄 

 社団法人日本海難防止協会の創立40周年を心よりお祝い申し上げます。
 わが国は、四面を海に囲まれており、この海から豊富な海洋資源による恩恵を受けるとともに、この海を渡って大量のエネルギー資源、食料等を輸入するなど活発に国内外の交易を行ってきました。このように海は、正にわが国の存立の基盤として機能し、我々の生活とは切っても切れない関係にあります。それ故に、この海の利活用に欠かせない船舶の安全の確保は、わが国にとって大変重要な課題となっているものであります。
 このため、海上保安庁におきましては、創設以来、海難防止を図るために日々努力を重ねてきたところでありますが、この長い道のりの中でかかすことができないのが社団法人日本海難防止協会の存在であります。
 社団法人日本海難防止協会は、昭和30年前後に相次いだ大きな海難を踏まえ、昭和33年に初の民間の海難防止団体としてスタートし、以来、当庁が数々の事故に対応して安全対策を検討するに当たりまして、海難防止に関する適切なご助言やご協力をいただいてきたところであり、まさに日本の周辺海域における安全の一翼を担ってきていただいたものと考えております。
 最近の要救助海難の傾向としては、全体的には減少傾向で推移しており、昨年の統計でみると海難隻数は1,678隻で、当庁が現在の形で統計を取り始めた昭和28年以来、もっとも少なくなっています。これは、海難防止に向けてさまざまな施策を展開してきた官民の関係者の地道な努力の積み上げの成果と言えるでしょう。
 しかし、昨年は、近年増加傾向が顕著であったプレジャーボート等の海難が、これまでもっとも多かった漁船を抜いて、とうとうワーストワンとなりました。最近の海洋レジャーの隆盛を考えると今後の推移が懸念されるところであり、社団法人日本海難防止協会の一層の海難防止への取組強化が期待されるところであります。
 また、昨年は、日本海におけるタンカー「ナホトカ号」の折損による海難・流出油災害、東京湾における大型タンカー「ダイヤモンドグレース号」の底触・油流出事故等大きな事故が発生いたしましたが、ダイヤモンドグレース号の事故発生後、社団法人日本海難防止協会においては、いち早くこれの再発防止のために「東京湾における大型タンカーの航行安全対策に関する調査・研究検討会」を立ち上げ、早急な安全対策をご検討いただき、当庁としても当該検討会における検討を踏まえて必要な安全対策をとってきました。
 さらに、本州四国連絡橋、関西国際空港、東京湾横断道路等数々の社会的にも注目を受けている大規模プロジェクトが、いずれも目に見える形で次々に無事に完成を迎えているところですが、社団法人日本海難防止協会では、これらの大規模プロジェクトの航行安全対策等につきましても幅広くご検討をいただいており、大いに評価されているところであります。
 海上保安庁も今年開庁50周年を迎え、1つの節目として心新たに海上保安行政に邁進していくこととしており、引き続き社団法人日本海難防止協会を始め、幅広く関係者の方々からのご支援、ご協力を賜りながら、海難防止に関する施策を推進して参りたいと考えております。
 40周年を迎えられた社団法人日本海難防止協会の役割は今後もますます大きくなっていくものと思われます。海難防止に向けてますますのご活躍されることを祈念いたします。

 

 

 

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