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国際活動にも期待

運輸大臣 
川崎 二郎 

 社団法人日本海難防止協会が創立40周年を迎えられたことを心からお喜び申し上げます。
 わが国は、四面を海に囲まれ、海から大変な恩恵を受けています。それだけに海を利用するにあたって、船舶の航行の安全を確保し、また海洋の汚染を防止することは、非常に重要な意義を持つものです。
 貴協会は、昭和20年代後半から30年代にかけて発生した北海道南東海域における409隻にのぼるさけ・ます漁船の大量遭難、国鉄連絡船洞爺丸の転覆沈没、紫雲丸の衝突沈没等の相次ぐ重大海難を背景に、海難防止対策を講じるため、海難防止に係る調査研究、周知宣伝を行う団体として昭和33年に創設されたものであります。
 その後、海洋環境保全を望む国際動向を背景に、昭和43年に海洋汚染防止について事業を拡大し、今日に至っています。
 創設以来、航行安全や海洋汚染防止に関する民間における中心的な機関として大きな成果をあげています。
 昭和49年の「第10雄洋丸」の衝突炎上事故に際して、貴協会は適切な事故対応を行われ、海上保安庁からその功績がたたえられています。
 また、貴協会は、本州四国連絡橋や東京湾横断道路の建設にあたり、航行安全対策をとりまとめています。そして、平成元年の潜水艦「なだしお」事故ならびに昨年の「ナホトカ号」および「ダイヤモンドグレース号」事故に際して、迅速に再発防止対策を調査検討しました。特にナホトカ号事故等の昨年の2つの油流出事故は、まだ記憶に新しいところです。
 一方で、貴協会は、国際的な事業にも取り組んでいます。昭和58年には、ロンドン連絡事務所を開設し、国際海事機関(IMO)における海上人命安全条約、海洋汚染防止条約等の国際条約の検討へ参加し、わが国の提案の反映に努められ、国際的に貢献しています。
 また、平成2年から、わが国の原油タンカーの主要ルートであるマラッカ・シンガポール海峡の沿岸諸国を中心とするアセアン諸国の国際協力体制を目的として、運輸省が策定したOSPAR計画の下、油防除の体制整備のための援助等を行い、平成8年には、シンガポール連絡事務所を開設しわが国とアセアン諸国との国際協力体制を増強しています。
 昨年のシンガポール沖でのタンカーの衝突油流出事故に際してシンガポール連絡事務所は、入手した事故情報を迅速に提供するとともに日本国政府の国際緊急援助隊の活動を支援する等の功績を上げました。
 さらに、平成8年から日本海周辺諸国の政府間で取り決めた北西太平洋地域海行動計画(NOWPAP)の下、油防除の協力体制の強化に向けて国際会議へ出席するとともに、運輸省とともに国際会議の開催等に取り組んでいます。
 これらの事業は、その時々において運輸省が行ってきた航行安全や海洋汚染防止についての数々の対策に対応して行われたものですが、このように着実に成果をあげられ、その経験と実績の蓄積により、貴協会の事業は創設当時に比べ飛躍的に充実しています。
 ナホトカ号等の事故では、一旦船舶事故が発生すると人命の安全や海洋環境に甚大な被害をもたらすことを改めて認識させられました。現在、既成緩和、行政改革等行政のあり方について広く議論が行われていますが、船舶の航行安全や海洋汚染防止は依然として国が確保しなければならないものであり、これらに対する行政ニーズはますます強くなってきています。
 そのため、運輸省としては、航行安全や海洋汚染防止について対策をさらに強力に進めるとともに、国内における対策のみならず国際的な協力体制の構築といった国際的な対応がますます重要になってくるものと考えています。そのためには、これまでにもまして貴協会の協力を得ながら、取り組んでいく必要があり、貴協会の事業がさらに充実していくことを期待しております。
 その意味で、創立40周年を節目に、今後とも貴協会が、海洋汚染防止や航行安全の中心的な機関として、ますます発展されることを祈念いたします。

 

 

 

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