日本財団 図書館


創立40周年にあたって/寺井 久美
(社)日本海難防止協会 
会長 寺井 久美 

 日本海難防止協会は、本年8月1日をもって創立40周年を迎えることができました。
 本年は、国際海洋年にあたっており、世界の世論が海を大切にして、美しくゆたかな海を後世に残そうとしているのであります。そのような年に本協会の創立40周年が巡りあったことは、偶然とは申せ感慨い深いものがあります。われわれといたしましても海難や海洋汚染を防止して海を大切に利用しなければならないと思うものであります。
 さて本協会はこの40年の間、会員の皆様はもとより、関係官民の方々の絶大なるご支援とご協力により、事業の伸展が今日の成果を見るに至り、海難防止と海洋汚染防止にいささか寄与することができましたことは、誠にご同慶に耐えないところでございます。
 とくに本協会の今日は、関係ご当局の絶大なるご支援とご指導および本協会の創設に参画された諸先輩のご苦心は申すまでもなく、日本財団、日本海事財団、日本船主協会等々の多大のご援助と、会員諸団体からの直接業務を担当する職員の派遣等によるご協力があってこそ、初めて今日の発展をみるに至ったと申しても過言ではありません。
 ここに、改めてご関係の皆様に対しまして、衷心から感謝の意を表する次第でございます。
 さて、ご高承のとおりわが国の海事産業は、海運、水産を問わず厳しい状況にあります。
 外航海運においては外国人との混乗方式を早くから導入しましたし、内航海運においては乗組員の高齢化が進み、数々の省力化を続けており、輻輳海域においても船橋のワンマン当直ができるような時代に入ってまいりました。一方遠洋漁船においては外国人乗組員の導入、また沖合、および沿岸漁船においては限度ぎりぎりの少数化で乗り切っている現状であります。
 このように海事産業を取り巻く環境の変化は、船舶の安全運航に少なからず影響があるものと心配しているところです。
 特に、外国人との混乗船においては、意思疎通とチームワークが重視される船舶操船に少なからず不安を与えており、この点に一層の留意をすることが必要だと思います。
 わが国の経済社会の発展に伴い船舶の大型化、高速化、海域利用の多様化が進み海上交通の様相を一層複雑なものにしております。
 特に、東京湾、伊勢湾、大阪湾、瀬戸内海等の輻輳海域の船舶交通量は過密化し、昨年の東京湾におけるダイヤモンドグレース号事故に見られるように、衝突、座礁などの海難が発生し易い危険な状況にあります。
 海難や海洋汚染等海上災害を未然に防止するためには、海事関係者のたゆまざる安全と防災のための不断の努力が必要であることは申すまでもありませんが、さらには広く国民一般のご理解とご協力が切に望まれるところでございます。
 本協会といたしましても、意義深い創立40周年を1つの契機として全員が初心にかえり、さらに全力を挙げて、課せられた使命の達成に邁進ずる決意でありますので、どうぞ関係の皆様方におかれましても、今後とも一層のご指導とお力添えを賜りますようお願い申し上げます。

 

 

 

目次へ    次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION