ロンドンの連絡事務所便り
少数精鋭のコスパス・サーサット
今回は、コスパス・サーサット(C/S)事務局を紹介します。
コスパス・サーサットシステムは、もともと人工衛星の一部を捜索救助用に使用した米・加・仏のサーサットシステムとロシアのコスパスシステムが、1988年の協定締結によって一緒になってできた制度です。
これが、全世界的海上遭難安全制度(GMDSS)の中に取り入れられ、タイタニック号以来のトンツー(無線電信)を終らせる要因となっています。
締約国は、衛星等の宇宙部分を有する前記4カ国のみで、その他はわが国のように地上施設提供国として、MCC(業務管理センター)とLUT(地上受信局)を有する国や、制度を利用する国がほとんどです。
日本は1992年以来運用しており、わが国の捜索救助区域内で発信された遭難警報については、捜索救助活動に密接に結びつき、実績を上げています。
また昨年11月からは北東太平洋での基幹MCCとして機能しており、韓国のMCCとは密接な情報交換を行っており、将来的には中国、台湾のMCCとも密接に情報交換を行うこととなります。
C/Sは総勢7人で、国際機関としては少数精鋭で英国ロンドンのINMARSAT(国際海事衛星機構)の事務局に間借りしています。機構改革が行われたINMARSATで、C/S事務局の移転の話も出ていましたが、今後も同じビルに同居することで落ち着いてます。
会議としては理事会と合同委員会が常設としていますが、業務の如何によって、適宜特別作業部会を設けて審議を行っています。
近年の会議では、通常の会議案件のほか、極軌道衛星を利用するC/S制度を補完する意味で静止軌道衛星を使用する案件について、特別作業部会が設けられて審議を行ったり、基幹MCCを有する国が集まって討議したりと活発な活動が続けられています。
また、会議での代表団の構成も各国の体制を反映してなかなか興味深いものがあり、日本は海上保安庁が代表団を構成しますが、米国は衛星を扱う国家宇宙局(NASA)や海洋大気庁(NOAA)、捜索救助を扱う沿岸警備隊(USCG)等が代表団を構成しています。
国際機関の会議といえば大会議場での会議を想像させますが、C/Sでは1つのテーブルを囲んで行われるいわば家族的ともいえる会議ですが、その分会議での発言も活発で、議場外での他代表団との接触も頻繁です。
またC/S制度締約国4カ国の発言力は大きく、これらの国からの出身者で構成する事務局も劣らず議論に加わっています。
会議出席者からの素朴な疑問としていつも言われるのは、経済大国の日本が宇宙部分を手がけてないのは不思議であり、検討すべき時期ではないかということです。
(大和秀一記)
