特集 BANからのレポート
−プレジャーボートの海難防止のために−
(財)日本海洋レジャー安全振興協会
常務理事 高野武王

高野武王氏
苦戦の続く海洋レジャー産業だが、プレジャーボートは小型船中心に増加している。しかし、これに伴って事故が増加しており、ついに漁船を抜いて事故件数がワーストワンとなった。事故防止に努力するとともに万一に備えてBANへの加入とライフベストの常時着用を呼びかける。
平成8年2月号の本誌でBANについて紹介させてもらってから、2年が経過しました。その後の状況を報告させていただき、海難防止に寄与すればと念願して投稿させていただきました。
さて、低迷を続けるわが国経済の中にあってレジャー業界は業績的に苦戦を強いられています。
労働省の統計によりますと、平成9年の年間総実労働時間は1900時間となり、対前年比19時間の短縮となっています。短縮の大きな要因は週40時間労働制が実施されたことに因るもので、小景気のため残業時間の増加もそれほどなかったためだそうです。
従って余暇時間は増加の傾向にあるわけです。
98年版レジャー白書によると、レジャーの「安・近・短」傾向は続いているそうです。
このため海洋レジャー産業の業績も苦戦から逃れられない状況にあるようです。
しかし業種によっては好調なものもあります。例えば釣具等は昭和63年以降常に右肩上りであります。
プレジャーボート関係では小型船舶操縦士の免許取得者数は、平成9年度は約96,400人で対前年比約5,000人の増加になっております。またプレジャーボートの保有隻数も小型艇を中心に増加傾向にあります。
このような状況下にあって、海難件数は海上保安庁の要救助海難統計によると、用途別においてこれまでトップにあった漁船に代わってプレジャーボート等がその位置を占めたとのことです。
事故に遭遇したプレジャーボートの救助を目的としているBANとしては、事業の重要性を痛感しているところであります。
BAN事業の展開
平成四年から東京湾、相模湾、伊豆諸島北部海域をサービス海域とした関東BANのシステム整備が.段落したので、平成8年7月から日本財団の補助をいただいて関西海域にBAN事業を展開しました。(「関西BAN」と略称)
サ-ビス海域は大阪湾、紀伊水道および播磨灘としています。
レスキューオペレーションセンター(ROC)は神戸市中央区に置き、救助艇を出動してもらうレスキューステーション(RS)は97社(9年度末)と関係の皆様の協力を得て整備できました。
展開の手法は関東BANとほぼ同様ですが、プレジャーボートに比較的多い漁網へのトラブルを早期、円滑に解決できるようなことも考慮し、全国漁業協同組合連合会の紹介により関係府県漁業連AH会から協力をいただき、漁業協同組合にRSへ参加してもらったことが特徴だと思います。
現在、12漁業協同組合にRSを引き受けていただいています。
出動要請件数
サービス開始以来の会員数と出動要請件数の推移は表1のとおりです。会員の出動要請率は事業開始以来の累計で3.9%となります。
当初の計画では3%と見積もっていたので、予想より要請率は高くなっています。
表1 BAN会員数と出動要請件数 ( )内は会員の出動要請件数
