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 ユーザーからは主として船体保険に関して意見(不満)が多く出されていたが、記憶しているものを羅列する。

1 肝心なもの(よく起きる事故)は、ほとんど免責されてしまう。
2 代理店(保険会社の営業社員を含む)が海のルールやヨットのことを知らないし、YM保険の内容も表面的なことしか知らないので、相談する気にならない。
3 保険会社の損害調査の担当者がヨットのことを知らないので、厳しく主張すると受け入れてくれることがある。黙っていると損存するのではないかと不安である。
4 免責事項が多いのに保険料が高い。
5 ハイテク備品を装備したヨットは損傷しやすいし修理費も高い。ローテク装備ヨットは事故も少ない。また、一部のよく事故を起こす人達のために保険料が高くなっている。そういう事情を見ないで同じ料率を適用するのは悪平等である。
といった意見が出され、保険会社の営業および損害凋査に対する不信感と料率体系の不備に不満が集約していたように記憶する。

保険会社からみたプレジャーボートの保険

 それでは保険会社側からみて、プレジャーボートの保険はどのような位置付けがなされているのであろうか。海のプレジャーボートに対比するものといえば、陸では自家用自動車ということになるが、この両者を取り巻く環境があまりにも違いすぎるので、単純に比較しても意味がないけれど、分かりやすくするために、両者の比較をしながら保険会社側の問題点を整理してみることとしたい。
 まず第一は絶対数の違いである。保有数を大.さっぱに比較してみると、プレジャーボートの約30万隻に対し、自家用自動車はその100倍の、3000万台を上回わる。数の違いは、後者が生活必需品になっているのに対し、前者はマニアのためのものである事を示している。
 自動車数の増加は事故件数の増加になって現われ、自家用自動車はもはや保険なしでは存在し得ない関係となって、被害者保護のための強制保険も整備されているのに対し、プレジャーボートは、事故発生件数が増加しても社会問題となるわけでもなく、強制保険制度はおろか登録制度すら存在せず、保険もオーナーの良識にまかされている現状である。
 かかる背景から、両者に対する保険会社の姿勢が違ってくるのは当然で、自動車保険の営業成績には各損害保険会社の命運がかかっているのに対し、YM保険はノンマリン営業メニューの品揃えの一つに過ぎない。
 マリン種目のPB保険に至っては、募集形態が代理店経由ではなく社員の直扱いである関係もあって、ごく少数の大型かつ高額なプレジャーボート以外は、積極的に営業活動をしていないのが実情である。
 前述したユーザーの不満の中に、保険会社社員の勉強不足という指摘があるが、それはYM保険がノンマリン物件であるという点に関連していると思う。


楽しい海洋レジャーだが、保険に入っておきたいものだ=ヤマハ提供

 

 

 

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