平成10年度 全国海難防止強調運動
「船位確認の励行〜正しい海図使用〜」
平成9年の海難をみると「乗揚げ」が「衝突」に次いで多い。特に、東京湾で発生したVLCCの乗揚げ事故は、湾内で大量の油を流出させたことから社会的に重大な問題を提起した。
そのような状況を踏まえ、今年は「船位確認の励行〜正しい海図使用〜」を運動の重点事項としている。
1 運動の趣旨
わが国周辺海域で救助を必要とする海難に遭遇した船舶(要救助船舶)は、最近一時増加の傾向を示していたが、平成9年は1,678隻と対前年比188隻(約10%)減少している。また、これに伴う死亡・行方不明者は170人で前年比43人減少している。
しかしながら、依然として船舶が全損したり、多くの人命が失われる重大、悲惨な海難の発生は後を断っていない。また、タンカーの海難は増加しており、特に2隻の大型タンカーの海難に伴う大量流出油による海洋汚染は社会的に大きな影響を及ぼした。さらにプレジャーボート等の海難は漁船を追い越しトップとなった。
海難の原因は、見張り不十分、船位の不確認、気象・海象に対する不注意等の運航の過誤や機関の点検・取り扱い不良等の「人為的要因」によるものが大半を占めている。なお、船橋内の体制、組織運用(BRM)の問題が指摘されるものも見られる。
これらの状況を踏まえ、乗組員はもとより、船舶所有者や運航者、漁業、工事作業、荷役、海洋レジャー等の海事・レジャー関係者、さらに広く国民に「海難ゼロヘの願い」をスローガンとして、官民の関係者が一体となり、集中的に全国海難防止強調運動を展開することによって、海洋における各種活動や海難防止の理解を深め、また海難防止思想の普及と高揚を図り、海難の発生を防止するものとする。
2 平成10年度の重点事項
「船位確認の励行〜正しい海図使用〜」
平成9年度の海難は「乗揚げ」が「衝突」に次いで多く、依然として高い水準を維持している。特に、東京湾で発生したVLCCダイヤモンドグレース号の乗り揚げ事故は、湾内で大量の油を流出させたことから、社会的に重大な問題を提起した。過去にも、積み荷油や燃料油が流出し地域に影響を及ぼした海難が散見されており、最近もわが国周辺での大型船舶の乗揚げ事故が後を断たない状況から、この種海難の防止は海上災害発生防止の観点からも極めて重要である。
また昨年は、プレジャーボート等の海難では乗揚げが27隻(44%)も増加しており、漁船でも海難減少のなか乗揚げ9隻の増加となっている。
したがって、船舶の乗揚げ事故防止対策は極めて重要な課題であり、船舶運航の基本的事項である「船位確認の励行」を重点時効として海難防止活動を展開する。
3 キャッチコピーおよびポスター図案
重点事項に則した作品を全国から公募し、選考委員会で優秀作品を選考する。(次ページ参照)最優秀作品はポスターとして使用し、海難防止意識の啓発に資する。また、公募活動により広く国民の海難防止の関心を高める。
4 運動期間
平成10年7月16日から31日までの16日間
5 主催者
(社)日本海難防止協会 (財)海上保安協会海上保安庁
6 後援者
運輸省 気象庁 水産庁 日本財団 日本海事財団