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主機の整備・点検・取扱不良

RORO船の衝突事例


 入港前に後進テストを行わなかったことおよび投錨準備不十分であったことのため、岸壁に衝突して船首部分に亀裂を伴う凹損を生じた事例

 船舶の要目等

総トン数   6,178?
用   途  貨物船
発生日時  平成2年3月26日午後3時50分ごろ
発生場所  大阪港
気象・海象 晴れ、北北東の風上げ潮の中央期

 概要

 A船は、ロールオン・ロールオフ船で、甲船長および乙機関長ほか12人が乗り組み、トラックの台車122台を載せ、平成2年3月24日午前11時15分北海道苫小牧港を発し、大阪港に向かった。
 甲船長は、翌々26日午後2時30分ごろ入港間近となったので、乙機関長を昇橋させて主機遠隔操縦装置の操作にあたらせ、1等機関士ほか2人を機関室の配置につけたが、船首の係船要員に錨を水面付近まで下げておくなどの投錨準備を命じることなく、徐々に減速して港内全速力の12ノットに下げ、同3時20分ごろ大阪南港外港南防波堤灯台から270度2,400メートルの地点で入港用意を令した。
 また、乙機関長は、入港に備えて昇橋したが、乗船以来1度も後進不能になったことがなかったことから、船長に進言するなどして後進テストを行うことなく、主機遠隔操縦装置の操作にあたっていた。
 その後、甲船長は、同3時46分半ごろ着岸予定地点までの距離が400メートルばかりとなったのを認めて主機を停止状態から半速後進を令し、号令に従って乙機関長が主機の後進操作を行ったものの、カム軸移動装置のストッパーが固着してカム軸が後進に切り替わらず、同時47分ごろ行きあしの減殺が10分でないと思っていたところ、着岸予定のA-5岸壁の300メートルばかり手前で乙機関長の報告を受けて後進操作の不能を知った。
 こうして本船は、甲船長が直ちに船首の係船要員に右舷錨の投錨を命じたものの、あらかじめ投錨の準備を十分に行っていなかったことから、投錨に手間取っているうち、同3時50分ごろ約1.5ノットの前進惰力をもって、左舷船首が同岸壁に約40度の角度で衝突した。
 衝突の結果船体は船首部に亀裂を伴う凹損を生じ、また、岸壁は水面下の壁面に損傷を生じた。

海難原因
 
 大阪港に入港する際、主機の後進運転に支障のないことが確認されず、主機カム軸移動装置のストッパが前進位置で固着したままとなっていて主機が後進にかからなかったうえ、投錨準備が不十分で、投錨に手間取り、前進惰力を止められなかったことによって発生したものである。

留意事項

(1) 船長は、着岸操船の指揮に当たる場合、主機遠隔操縦装置の不測の事態に速やかに対処できるよう、錨を水面付近まで下げておくなどの投錨準備を十分に行っておくこと。
(2) 機関長は、長期航海後の入港作業に取り掛かる場合、船長に進言するなどして後進テストを行い、機関の前後進切替操作に支障のないことをあらかじめ確認すること。

(海難審判庁防波堤等衝突海難の実態から抜粋)

 

 

 

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