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ま ん が

 多くの漁船がそうであるように漁業専用通信の大きな特徴の1つである通信上の集団、いわゆるQRY通信がいち早く第81豊栄丸の火災を僚船に伝え、僚船から漁業無線局に通報し、綿密な緊急連絡体制が確立され、現場の僚船による迅速な捜索・救助活動が展開されました。
 救助された同船の船長が「火のまわりが早く、SART(捜索救助用レーダートランスポンダ=船舶あるいは航空機に装備されているレーダーにより遭難船の位置が確認できる装置で、夜間など視界の悪いときに非常に有効)を取り外せなかった」と語っていましたが、救助に向かった僚船の現場到着時刻が日没前だったことが幸いしたと思います。
 また「救命いかだで漂流中、連絡設定後は、衛星イパーブのスイッチを30分入れて5分切るなどして同装置の電源確保に努めた。僚船に救助されたあとは同装置のスイッチをオフにして止め金もしている」と救助された僚船を通じて海上保安庁に伝えてほしいとの依頼が所属の漁業無線局にあったとのことです。
 最近、全地球規模で問題となっている誤警報発射に神経を配るなど、冷静・沈着な行動は有事に備えた常日ごろの事前訓練の重要性を改めて教えられました。
 この遭難の教訓としてGMDSS体制への移行の有無にかかわらず「突然消息を絶つ」最悪のケースを避けるためには、新体制による救命無線設備の設置は必要不可欠ですが、同時に可能な限り「船位通報制度」を実施し、自船の位置を絶えず陸上の捜索救助機関に通報しておくことが肝要であると思います。最悪のケースを避けるためにも関係者各位のご理解をお願いしたいと思います。

参考=イパーブのスイッチを30分入れ5分切るという動作は早期に遭難位置を確定する観点からは問題を生じかねないというのが日本海難防止協会の見解です。


 

 

 

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