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 母船や独航船の人達にあてた家族からの郵便物を前にして、にぎやかな談笑が交わされることだろう。本日母船に接舷予定の第12大東丸という独航船の船用品の入った託送品を探すのに苦労していた。今回持っていかないと次の接舷が2週間ほど後になるという。

 つぎつぎと接舷されゆく独航船
 親に群れいる子のごとくあり

 6月17日、午前5時40分から移動がはじまる。真針路310度で34カイリほど航走して、午前8時40分ごろから漂泊に移る。午前10時ごろ母船より大発艇に乗って2人が連絡にきた。用件は本船に第12大東丸より塩蔵のさけます2万尾を仮積みしてくれとのことであった。
 午後1時ころ母船から大発艇によって持ってきた大きなゴムのエアフェンダーを取りつけ、積荷に使用の本船のデリック(揚貨棹)を上げて用意した。午後4時ごろ第12大東丸が本船に接舷し、ローリングのはげしい中で積荷役作業を開始した。
 午後7時過ぎ、積荷役が終って作業員が母船に帰ったあと、漂泊に移ったが間もなく濃霧となる。
 6月19日、午前3時ごろになっても依然として霧がかかっている。視界は約300メートルで風向は南東だ。レーダーで母船の映像を見ると南の方向約3カイリのあたりに見える。午前8時から移動のスタート、真針路150度、33カイリほど航行したあと漂泊に移る。

   一昨日は1007ヘクトパスカルであった低気圧が、994ヘクトパスカルまで発達して今朝の9時現在には北緯46度、東経165度にあって時速15ノットで北東進している。本船も影響を受けるようになり、午前10時ごろより南東の風が強くなった。
 気象通報によると低気圧の中心から350キロメートル以内は風速20から40ノットになり、500キロメートル以内は霧のため視界が悪いと報じていた。夜になって濃霧となり、強くなった風浪とともにうねりも出てきて、船は次第にローリングがはげしくなってきた。
 6月23日、午前3時ごろセレコーダーが鳴ったのでトランシーバーのスイッチを入れたが雑音ばかりでよく聞こえない。さっそくスタートして母船に近づいてみると、4カイリほど離れたあたりからトランシーバーで交信できるようになった。独航船が網を揚げている状況をロシアの監視船が見ているので、南西へ10カイリほど航走せよといってきた。
 午後3時ごろ母船より連絡があり、第1回目の接舷作業を開始する。当時は霧で視界が300メートルほどの中を逆着け(母船と本船の船首が逆になる)である。母船の後部を回って左舷回頭して母船の前方0.5カイリになったころさらに左舷回頭した。
 本船の船首が母船と正反対になり、エンジンを使用しながら極力行き足を減殺した。本船の船首が母船の船首を過ぎたころ本船の行き足はわずかであった。母船が圧流されるのを待ちながらエンジンを使用して行き足を調整した。
 母船からスピーカーで接舷時にアスターンを使用する際、船首が右偏するので船尾からの係船索を早く取って捲きしめ船首の右偏を防止するようにとの助言があった。

 

 

 

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