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海上浮標式の覚え方

その骨と要領


舵社 中川 久


 船舶で港湾または内海を航行するとき、どこでも目にするのは浮漂、灯漂および立漂である。
 これらを見て即座にその種類や意味などがわからないと船舶航行上危険なことがある。だが、これらを逐一正確に覚えようとしても種類が比較的多く、せっかく覚えたつもりでもしばらく出会わないと忘れていて、慌てて海図を見たり、灯台表をめくることも多い。
 そこで今回は、以前海上保安庁灯台部で聞いた「浮漂式の覚え方」を私なりにアレンジしたものを紹介してみよう。
 「浮漂式」とは、海上保安庁が設置する浮漂などの種類、意味、形状、塗色、灯質および水源について定めたルールのことである。これはわが国だけのものでなく世界的に統一された定めで、これを「ITLA(国際航路標識協会)海上浮漂式」といい、灯台表に解説されている。だが「IALA海上浮漂式」に1つだけ世界的に統一されていないところがある。
 それは、わが国や韓国、フィリピン、アメリカその他北米、南米の各国では「左舷標識は緑」「右舷標識は赤」を使っているが、その他の国ではこれとは逆に「左は赤」「右は緑」を使っている。
 わが国のように「左は緑」「右は赤」を適用している国々を「B地域」また「左は赤」「右は緑」を適用している国々を「A地域」とよんでいる。


1側面標識

 側面標識には左舷標識、右舷標識、左航路優先標識、右航路優先標識の4つがあるが、左右航路優先標識は現在わが国では使われていない。左舷標識や右舷標識は航路の左側や右側に設置されるが、この標識は必ずしも航路を示すため常に左右対で入っているとは限らないので注意を要する。
 ここで左側とか右側とは、水源に向かって左または右のことで、告示で次のように定めている。

 (1) 港、湾、河川およびこれに接続する水域の水源は、港、湾の奥部または河川の上流
 (2) 瀬戸内海(関門海峡を含み宇高航路を除く)の水源は神戸港
 (3) 宇高航路の水源は宇野港
 (4) 八代海の水源は三角港
 (5) 右記以外の水域の水源は沖縄県与那国島

a 塗色と灯質

 船舶の舷灯の色と側面標識の塗色、灯色に着目する。
 入港するときは、船の右舷灯の緑と右舷標識の赤、左舷灯の赤と左舷標識の緑が対応し、あたかも磁石の赤と緑が引き合うように船が港へ引き付けられて入港すると覚える。
 また、出港するときは入港のときと逆で、右舷灯の緑と左舷標識の緑とが磁石の同極同士が反発するように船が港に弾かれて出港すると覚える。

b 頭漂(ずひょう)

 標体塗色の赤と緑は、昼間、光線の具合で黒ずんで見分けがっかない場合がある。こんなとき頭標の形を覚えておくと助かる。
 右舷標識の頭標は円すい形一個で三角形に見える。これを矛(ほこ)に見立てる。また、左舷標識の頭標は円筒形一個で四角形に見える。これを盾(たて)に見立てる。
 昔の戦士が手にした左に盾、右に矛と左舷標識の頭標の四角形と右舷標識の頭標の三角形とを連想して覚える。<図1> 参照


<図1>

 

 

 

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