ロンドン連絡事務所便り
車より船が優先するタワーブリッジ
今回はロンドン港湾局(PLA=Port of London Authority)を紹介します。
ロンドンといえばテームズ、テームズといえばロンドンという具合に、パリのセーヌ川と並んで有名なのではないでしょうか。
このテームズの河口からテディントンロックまでを受け持っているのが、このPLAです。
港湾局と訳しましたが、その業務範囲は日本の港湾局の範囲を越えており、テームズ川の船舶航行規則管理、作業許可、水路測量、タグボート、はしけの貸出登録、沈船処理、作業員免許、リッチモンドロック、ダムの維持管理を主な業務内容としていますが、港湾パイロットも手配し、危険物管理、1971年油濁防止法関係の港長業務、航路標識の供給維持、また、テームズ下流のグレーブセンドではVTSによる監視等を行っています。
ロンドン搭の斜め向かいにりっぱな建物があり、3またの鉾を持ち、2頭のイルカを従えたホセイドンらしき彫刻を有する目を見張るようなりっぱな建物があります。現在は、民間会社のビルですが、以前はPLAの本部があったところです。19世紀のロンドンのドックが栄えていた往時を偲ばせるものがあります.。
現在は、タワーブリッジのすぐ下流のところに近代的な事務所を構えています。
現在のPLAは、「1908年の設置法ににづいてできており、テームズ川筋95マイル(150キロメートル余り)を所掌する組織で、別荘でも年間約30,000隻の外洋商船が出人しています。
川筋にはクルーザー、ヨット等が並んでいるところがあり、そのような小さな船を入れると年間約100,000隻もの出人りがあるそうです。
実は、あのタワーブリッジの開閉をするのもPLAの権限で、車より船が優先のお国柄ですから、朝の通勤時に重なったときは激しい渋滞が起きます。
朝のテレビ、ラジオ等でも開閉時間を知らせているようですが、あまり効果はないのかもしれません。
海上保安庁の練習船も、1度通過したことがありますが、PLAの人はよくそのことを覚えていてくれました。
グレーブセンドのVTSセンターでは、川筋の情報をすべて統括しており、キャプテンと呼ばれるような経験を積んだ人が操作卓についており、船からの通信を受けて即断即決で素早く仕事をこなしているのが印象的でした。
(大和 秀一)
新刊紹介
豪華客船スピード競争の物語
デニス・グリフィス著
栗田亨訳
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本書は、1,800年代の外輪蒸気船の就航からクイーンエリザベス2の大改装にいたるおよそ150年の智船の発達の歴史をたどったものである。時代時代に活躍した200隻にも及ぶ代表船をとりあげ、多くの貴重な写真や図面とともに装置設備や推進機関などの細部にわたるまでを紹介する。
著者は英国の元機関士だが、華やかな甲板のシーンに対して、目に見えない喫水線下で黙々と機関を動かしてきた男たちの誇りとおもいを書きたかったという。
(成山堂書店 6,930円)