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海外研修員見聞録 イギリス(2)

富山商船高等専門学校教授
山崎 祐介

(つづき)

(7) 機械類シミュレーター

 3つのコースがあり、そのうちの1つ機械類シミュレーターはディーゼル機関、補機用でリアルな感じをフレキシブルな床、音等で出している。ここでは客船会社から2等機関士4人を対象に機関室システム操作の1週間(42時間)コースの訓練を見学できた。
 まず、シミュレーター訓練の前に機関室操作の詳細、船橋操作の概要および船舶取り扱いの概要の講義があった。その後シミュレーター訓練に入るのだが、この事前の講義は重要不可欠のものだと思った。
 シミュレーター訓練は舶用機関システムの部分訓練と全体訓練が行われていた。訓練の詳細は、筆者には理解できない部分もあったが、シミュレーター訓練の要領は訓練を有効なものにするために、まず筆記訓練(30分)が行われた後、約2時間のシミュレーターによる実習が行われ、さらに1時間におよぶ体験報告が行われる。
 基礎教育を終え、海上経験を有する専門家を相手の講義や訓練だけに教官も真剣そのもので、講義や報告では、受講生は必ず1つのテーマごとに意見を求められていた。

サザンプトン教育施設の海洋学部

 教育施設は大学とほとんど変わらない数多くの学部を有し学生数は1,080人である。その1つに海洋学部がある。コースは完全に陸上対応学部で船員養成のための教育ではない。
 筆者はどのようなコースと内容が、水際に適合し社会的ニーズに対応しているかに興味を感じた。
 商船学科と直接関連がある学科、コースは、海事技術学科(海事技術コース、ヨット・舟艇コース)海事取り扱い(国際運送コース、船舶運航コース)があり、さらに1学年を除いて全科目選択制の海事研究学科があった。
 卒業生は100%船会社・水際関連企業に就職するという。
 ここを見学して水際関連学科とその教育内容、選択制を多く取り入れ、固定メニューのコースをできるだけ避けて、学生が自ら勉強する科目を選択して自らのコースを造りながら学ぶ新しいシステムを見ることができ、大いに参考になった。

英国の船員教育

 英国では過去10年前に10校あった海事専門学校が5校に半減した。現在では、3つの専門学校(航海科専門学校と機関科専門学校)と2つの専門学校(航海科のみ)がある。
 現在の学生数は全部合わせて1学年で約520人である。卒業後は全員が英国籍の船会社に航海士、機関士として就職できる。10年後陸上に転職する率を聞いたところ「結構多いのではないか」という。
 この転職をどう考えるか、陸上にも対応できる教育内容を考えていないように思えた。筆者の「船舶が自動化し、乗組員は運転手に近くなる。教育内容は減るはず。その分陸上にも対応できる教育内容があってもよいのではないか」という提案に賛成してくれた教授も多くいた。

 
機関室シミュレーターと教官

 

 

 

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