船舶航行の実態
中ノ瀬西側海域は、湾口部・浦賀水道と湾奥部諸港域とを結ぶ船舶通航路であって、入出湾船舶の通航とともに横浜・川崎への入出港船舶の操船水域に供されており船舶間の進路は複雑に交差し、1日あたり約700隻にも及ぶ輻輳海域である。
そして、この海域は海上交通安全法に基づく中ノ瀬航路がその水深の制約により深喫水船の航行に支障があるため、喫水17?を超える船舶は中ノ瀬西側海域を利用北上することが許容されている。
このような背景もあって、この中ノ瀬西側海域にあっては海上保安庁の行政指導によって中ノ瀬西端を示すBブイからDブイに至る間のそれぞれのブイを結ぶ線からその西側に離隔距離1,000?の水域幅の海域を北航船通航路と定め、南航船はさらにその西側海域を南下航行するものとする分離対面通航が定められている。(図1参照)
ところで、中ノ瀬西側海域での前記北航船通航路を航行する深喫水船の数は1996年を例にとれば年間130隻にも及び、そのうちダ号のケースに相当する喫水19?以上の船舶は99隻にも及んだが、この北航船通航路での船舶通航の動静をみると大型タンカー航行に際してのDブイからBブイの間における付近航行船舶の通航実態は、その後の観測例をみると図1に示すとおり北航船通航路内での反航南航船の数も全体の20ないし30%にも達していた。(参考資料2)
しかも南航船の占める割合はBブイに向けて南下するほど増加していた。
このように、中ノ瀬西側海域での行政指導による分離対面通航に反する船舶もかなり存在しており北航大型タンカーの航行に影響を与える実状にあり、行政指導の順守が強く望まれる。

〈図1〉中ノ瀬西側海域の船舶通航路と通航実態(観測例)=参考資料2