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3 有害液体物質の不適正な排出の防止のためにとるべき措置

(1) 有害液体物質の積荷、積替え及び揚荷

 (1) 船長は、有害液体汚染防止管理者及び関係する各部の主任者の意見を聴いた上、作業予定地の気象や海象などを考慮して作業予定表を作成し、これを乗組員に周知します。

 (2) 船長は、次の事項に関して事前に陸上の荷役関係者と打合わせをし、その内容を作業に従事する者に周知します。

イ. 作業の際取り扱う有害液体物質の性質及び量
ロ. 有害液体物質の荷役の開始及び停止の連絡方法、荷役の際の許容圧力その他作業の遂行に必要な事項
ハ. 漏洩事故等の非常事態が発生した場合の処理に関する事項
ニ. 荷役施設の概要


 (3) 船長は、作業の開始前に、作業に従事する者の配置状況を確認するとともに、大量の有害液体物質が排出された場合などにおける事故処理体制を確立しておかなければなりません。

 (4) 有害液体汚染防止管理者は、作業の開始前に次の事項について点検し、その結果を船長に報告しなければなりません。

イ. ホースの耐圧性
ロ. スカッパ一孔の閉鎖状況
ハ. ホースの接合状況及び屈曲状況
ニ. バルブの作動状況
ホ. 有害液体処理機材の整備状況


 (5) 作業に従事する者は、作業の遂行にあたっては、次の事項を実施します。

イ. 荷役開始直後は、送液流速を低速で行うこと。
ロ. パイプ等の接合部分及び作業に使用されるタンク、荷役装置等からの漏洩がないことを確認すること。
ハ. 前号の確認後でなければ送液流速を所定の速度まで上昇させないこと。
ニ. 荷役中は、常に作業に使用されるタンクの液面監視チェックをひんぱんに行うこと。
ホ. 荷役終了に近づいた場合は、余裕をもって送液速力を落とすこと。

 (6) 作業に従事する者は、作業が終了した場合は、作業に使用したタンク、荷役装置等からの漏洩がないことを確認した後、作業に使用したバルブ、パイプ等に残留した有害液体物質の処理を行うとともに、マニホールド等に蓋を施すことなどにより漏洩、流出を防止するための措置を講じます。

 (7) 有害液体汚染防止管理者は、前項の措置の状況を点検して、その結果を船長に報告しなければなりません。


(2) 通風洗浄
有害液体物質のうち、摂氏20度において蒸気圧が、5キロパスカルを超える物質については、通風洗浄による貨物タンクの浄化方法が認められています。この方法で浄化した後にタンクに加えられた水はクリーンとみなされて、自由に船外に排出できることになっています。従って、運航者にとっては大変都合のよいタンク浄化方法といえます。
通風洗浄の実施は、地方運輸局長の承認を受けて本船に備えられている設備の操作手引書に従うことになります。その際、次の事項は特に留意が必要です。
 (1) 設備の操作手引書に示されるストリッピングを行い、タンク内に残留する貨物の量を極力少なくさせること。

 (2) ポンプ及び管系内の通風による浄化は特に慎重を要します。従って、これらの中の残留物の除去は特に入念に実施すること。

 
(3) 事前処理の方法
有害液体物質を排出しようとする場合には、有害液体物質の汚染分類の区分に応じ有害液体物質を積載した貨物タンクについて、設備の操作手引書に従い事前処理を行うこととなります。

 (1) 事前処理作業時の措置

イ. 事前処理の実施計画をたて、これに必要な事項を乗組員に事前周知すること。
ロ. 事前処理を実施する貨物艙に係る関連管系のバルブを確認し、必要以外のバルブは閉鎖しておくこと。
ハ. タンク洗浄を伴う事前処理作業中は、当該タンクのマンホール等タンク全開口部は完全に閉鎖しておくこと。
ニ. タンク洗浄を伴う事前処理作業において、当該タンクから洗浄水をスロップタンク等に除去する場合、スロップタンク内のアレージに十分注意し、オーバーフローのないよう注意すること。

 (2) 積載していた貨物がA類物質等の場合の事前処理の措置
この場合積載していた貨物がA類物質等である場合には、次の次項を行わなければなりません。

イ. A類物質等の取卸しの後に事前処理を行う場合は、事前に会社(又は運航者)に連絡し「事前処理確認申請」手続きを行うこと。
ロ. 船長は、着岸(桟)予定日時、事前処理の方法、有害液体物質の名称、汚染分類、数量、貨物積載タンク数その他の必要事項について、予め確認申請先の管区海上保安本部、海上保安(監)部署又は指定確認機関に連絡し打合せを行うこと。
ハ. 事前処理として濃度測定を行う場合は、規定濃度になるまで洗浄し貨物タンクが空になるまで洗浄水は受入施設に排出すること。なお、濃度測定のための洗浄水採取場所には受皿等を用意するほか、有害液体処理機材等を準備するとともに本船設備等の利用についても便宜供与を図ること。
ニ. 予備洗浄を行う場合は、設備の操作手引書付録Bに従って行い、洗浄水は受入施設に陸揚げすること。
ホ. 指定確認機関などによる事前処理の確認が終了した場合、船長又は有害液体汚染防止管理者は、有害液体物質記録簿へ所要の記載を受けるとともに、「事前処理確認済証」の交付を受け、有害液体物質記録簿に添付すること。

(4) 貨物タンクヘの水バラストの積込み、排出又は処分
 有害液体物質を取り卸し、事前処理が行われた貨物タンクに加えた水は、有害液体物質の汚染分類の区分に応じ、設備の操作手引書に従い排出又は処分を行わなければなりません。

(5) 貨物タンクの洗浄、洗浄水の排出及びスロップタンクからの排出
 有害液体物質を取り卸し、事前処理を行った貨物タンクの洗浄及び同洗浄水の排出、並びに洗浄水を回収したスロップタンクからの当該洗浄水の排出は、すべて設備の操作手引書に従い実施します。

 

 

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