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(2) A類物質等に係る事前処理の確認(法9の2一(4))
有害液体物質の排出につき、海洋環境の保全の見地から特に注意を払う必要があるものとして定められたもの(A類物質等)を排出しようとする者は、その排出に先立って実施する事前処理が一定の基準に適合するものであることについて、海上保安庁長官又は海上保安庁長官が指定した者(指定確認機関)の確認を受けなければならない。
なお、事前処理の確認の申請をしようとする者は、所定の手数料を納付するとともに、海上保安庁長官又は指定確認機関の指示するところに従い、確認の準備をしなければならない。
 海上保安庁長官又は指定確認機関は、その実施する事前処理が一定の基準に適合するものであることを確認したときは事前処理確認済証を交付することとなっており、その交付を受けた者は、当該事前処理確認済証を当該船舶が備え付ける有害液体物質記録簿に添付しなければならない。

(3)有害液体物質による海洋の汚染の防止のための設備等(法9の3)

(1) 有害液体物質排出防止設備(法9の3一(1)、技術基準21)
 海洋環境を保全する見地から、有害液体物質の排出基準は確実に遵守される必要があるが、このためには、排出基準の遵守を船舶の運航者の行為規則に委ねるのではなく、排出基準を機械的に担保するための設備の設置を義務付ける必要性から、本項が設けられている。有害液体物質をばら積みして輸送するすべての船舶(有害液体物質ばら積船)の船舶所有者は、有害液体物質を積載した貨物艙及び関連管系内に残留する有害液体物質の量を少なくするため又は有害液体物質を含む水バラスト等を船内で貯蔵若しくは処理するための有害液体物質排出防止設備を設置しなければならない。
 有害液体物質排出防止設備は、積載する有害液体物質の区分に応じて次の措置から構成される。

イ. 予備洗浄装置(技術基準22)
 貨物の取卸しが行われた後、貨物艙を真水等で洗浄するもの(A類物質等、B類物質等又はC類物質等を積載する貨物艙。ただし、A類物質等を積載する貨物艙にあっては専ら濃度測定による事前処理を行うもの、B又はC類物質等を積載する貨物艙にあっては専らストリッピングによる事前処理を行うものを除く。)

ロ. 有害液体物質水バラスト等排出管装置(技術基準23)
水バラスト等を受入施設へ移しかえるための排出口を有し、排出用マニホールドを暴露甲板上の両舷に設けたもの(すべての有害液体物質ばら積船)

ハ. 喫水線下排出装置(技術基準24)
 喫水線下に位置し、排出口の口径のQdsinθ/5l(m)以上する等、有害液体物質を含んだ水バラスト等を海洋へ排出し、すみやかに拡散させるもの(A類物質等、B類物質等又はC類物質等を積載する有害液体物質ばら積船であって、政令別表1の8第1号から第3号までの排出基準により排出を行うもの)

 Qd:排出用ポンプの1時間当たりの最大排出容量(立方メートル)
 θ:排出用配管の船体外板に対する取付角(度)
 l:船首垂線から喫水線下排出口までの距離(メートル)

ニ. 通風洗浄装置(技術基準25)
 貨物の取卸しが行われた後、貨物艙を機械的な通風により洗浄し、洗浄の状態を確認できるもの(通風洗浄により貨物艙の事前処理を行う有害液体物質ばら積船)

ホ. 貨物加熱装置(技術基準26)
 船体外板を構成するいかなる部分とも壁画を共有しない貨物艙に設置され、貨物である有害液体物質を有効に加熱できるもの(専ら融点が温度15度以上であるB類物質等の輸送の用に供される有害液体物質ばら積船)

へ. ストリッピング装置(技術基準27)
 貨物艙及び関連管系内に残留する有害液体物質を一定の基準(B類物質等:0.1m3以下、C類物質等:0.3m3以下)とする性能を有するもの(B類物質等又はC類物質等の輸送の用に供される有害液体物質ばら積船)

ト. 希釈水漲水装置(技術基準28)
 貨物艙に残留する有害液体物質の体積の9倍以上の量の水を注入することができるポンプと配管を有するもの(D類物質等の輸送の用に供される有害液体物質ばら積船)

チ. 専用バラストタンク(技術基準29)
 貨物艙及び燃料油タンクから完全に分離された水バラスト積載専用のタンクで、喫水を0.023L+1.550(M)以上とする等、必要な容量を有するもの(有害液体物質を海洋へ排出しない有害液体物質ばら積船)
 有害液体物質排出防止設備の具体的な装置及び機器をまとめると、次の図のようになる。

 

 

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