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ロ.久米島フェリー(株)[ぶるーすかい(沖縄〜真泊〜渡名喜、鈴木三郎、古荘雅生)]

(イ)出入港時、操舵室における船長の1人操船について

 4名の乗組員について、1人は操舵室(船長)、船首配置1人(一等航海士)、船尾配置1人(一等機関士)、舷門1人(機関長)という運航体制である。出入港時、本船の操舵室より見て船長のワンマンブリッジはたいへん危険である。
 船長の体調に不時の事態が起こった時や、船長がミスをした時のバックアップ体制がない。バックアップができる体制を考えるべきである。例えば、
○出港時舷門を完全に閉めて機関長が操舵室に入ってから運航を開始する
○入港時船長と機関長が操舵室にいて係留が完全に終わってから機関長が舷門を開けに行く
等の対応を検討する必要がある。

(ロ)操舵室内のダイヤ表について 

 操舵室正面左上部に運航ダイヤ表が張付けられている。2年前の古いダイヤのままであり、新しいダイヤのものと入れ替えておく必要がある。

(ハ)操舵室内の旋回性能表について

操舵室正面右上部に旋回性能表が張付けられている。グラフが細かいため見づらくなっているため、見易いものに入れ替えておく必要がある。

(ニ)出入港時の案内テープについて

 訪船時、往航も復航もしけのため遅延した。往航時の到着案内について、通常のテープを放送することによって案内していた。旅客に島民が多いから、あるいは知り合いが多いからと言っても客は客である。出港時、波浪による動揺が予想される場合、遅延が予想される場合、遅延して到着した場合等、船長自ら挨拶、説明および乗船感謝の言葉を放送する必要がある。そうすることが旅客の不安を解消し、あるいは船への信頼を高めることにつながるものである。往路後のミーティングで指摘したところ復路で改善されていた。

(ホ)僚船・船間連絡について

  同一航路には、同じ会社の2隻のフェリーが就航し、また途中那覇〜座間味間に高速旅客船とフェリーが就航している。これらの船舶とすれ違うときに情報を交換する習慣を付けるべきである。直前の航路状況・気象海象状況を交換し合うことにより、さらに安全な運航が可能となる。

(ヘ)通常連絡・入港連絡について

  本社、営業所との通常連絡や入港連絡は規定通り行われていた。しかし、到着時刻、乗客数を本船から知らせたものに対し、営業所からの言葉に「了解、何もない」と言うものがあった。全く意味不明である。本社も営業所も本船も、運航基準の第11条(通常連絡等)、第14条(入港連絡等)記載の通りの内容を連絡し合うべきである。全社的に一考する必要がある。

(ト)発着場の旅客の誘導路について

  高速旅客船「ぶるーすかい」の泊埠頭船着き場は、「とまりん」(有料駐車場、ショッピング・レジャーセンター、ホテル、乗船待合所、船への誘導路等の集合ビル)前面にある。「とまりん」と船との間には一般車道とフェリーの乗船待機駐車場とがあり、乗船客はこの車道と駐車場を横断することとなる。離れたところに信号のない横断歩道が設けられているが乗下船客はまっすぐ「とまりん」に入ろうとし横断歩道でないところを横断している。非常に危険な状況である。「とまりん」建設時には、船へのランプゲイトを設ける予定であったとのことであるが、実現していない。関係者の協議により早急に改善すべき事項である。

(チ)那覇港泊埠頭出入の調整について

  那覇港泊埠頭は、多数の旅客船、フェリー、観光船が発着しているが、泊埠頭入り口付近での入出港について話し合いがなされていないとのことである。利用船社による最狭部通過について話し合いの機会を持ち、それぞれの船社間コミュニケーションを保ちながら、安全な通航を諮るべきである。 

(リ)発港前検査簿の確認について

船員法の規定に則り、発行前検査簿にある確認項目がチェツクされている点は良い。しかし、船長および運航管理者の検印がなされていない。チェック欄を設けながら発港前の確認体制が十分に生かされていないと思われる。ダブルチェック、あるいはトリプルチェックは安全確保のために必要であるため、船長および運航管理者はチェック欄へ記入することによって安全運航の第1歩とすべきである。

(ヌ)着岸時のヒービングライン使用について

船首配置および船尾配置では、係留索を陸上作業員に直接手渡していた。係留岸壁や係留方法は、毎日の運航に伴う係留作業として確実に行われていたため、特に不都合な点は見られなかった。しかし、係船作業中に強風による船尾圧流という状況も見られたため、状況によりヒービングラインを使用し、操船者(船長)の着岸余裕を確保する必要があろうと思われる。また、船長が着桟時の概略風圧力を知るために、岸壁上に吹き流しポールのような設備を検討していただきたい。

(ル)レクリェーションの実施について

福利厚生の一環として、全社を挙げてのレクリェーションが頻繁に行われているとのことであった。安全運航を確保するために乗組員同士の意志疎通は職場環境を向上させるためにも大切であり、今後とも継続して実施していただきたい。

(ヲ)【乗組員および運航管理者からの要望】

 久米島入港前に船位を確認しながら入港針路を確定し、驟雨による視界制限状態でも船位の確認がレーダーを用いて容易に行えるようにするため、御神埼(Ugan Saki)灯台にレーダービーコン、あるいはレーダー反射器を取り付けるように要望する。
 海難防止の周知宣伝事業報告書(海難防止訪船指導)は当該会社だけでなく、一般旅客船会社にも入手できるようにして欲しい。

 

 

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