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(2) 短距離フェリー

イ. (泊〜阿嘉〜座間味)

 船首・船尾への指令装置について  放送設備は、船首へ指令することができない装置である。指令装置に予備端子があるので、船首・船尾へ同時に指令できるよう改良すべきである。また指令装置のスイッチが左足下にあるため、切り替えに操船姿勢を崩さねばならず、作業上不都合であり改善する必要がある。
 操舵室内の非常警報の説明板が、後部ソファーの横にあり、汽笛吹鳴の方法が文字表示のみであった。非常警報の汽笛吹鳴方法を目立つものとし、操舵室前面に置くべきである。
 船首配置乗組員の船首部への移動は、客室内船首部中央のドアを開けて出る方法と操舵室ウィングから傾斜のある客室天井を歩く方法がある。スタンバイ時、乗組員は傾斜のある客室天井部を歩いていた。波浪のため船体動揺があること、雨や海水で濡れていることを考えれば、滑って転倒する恐れがあり非常に危険である。早急に安全対策を検討していただきたい。
往航時、旅客が多く客室が混雑していたため、旅客が客室天井部の甲板に出ていた。波浪で動揺すること、スリップしやすいこと、風が強いこと等を考えれば、客室天井部の甲板は立入禁止を徹底すべきである。(立入禁止のロープが張られているが容易に取り外しができる状態であった。)

ロ. (泊〜真泊〜渡名喜)

 船首・船尾への指令マイクについて

 出入港時船橋は船長一人であり、右手は主機操縦ハンドル、左手は舵輪を操作しているので、船首・船尾への指令はハンドマイクではなく、口元まである固定マイクか、ワイヤレスマイクか、ヘッドホンマイクを採用すべきである。ハンドマイクを裏表反対に使用しても気付かず、船長の指令が船首・船尾に届かない状況や操船のためハンドマイクを持つことが出来ない状況があった。

 主機回転計の表示面について

 主機回転計の表示面は、外側が主機回転目盛りで内側がプロペラ回転目盛りであるが、 ?それを明示する表示がなされていない。?定格回転の指針位置が汚れと日焼けにより判然としない。?危険回転の指針位置がない。これらは表示面のみの問題であるので明確にしておく必要がある。

 トランシーバーの充電について

 トランシーバーを所持し使用しているが、充電が不十分で少し放置すると使用困難な状況となっている。充電をこまめにするか、トランシーバーを更新する必要がある。

ハ. (広島〜呉〜高浜〜三津浜)

 救命設備に関し、3時間の平水航路で法的には認められているとしても、救命筏10個のみでは万一の場合を考えた時に心細い。救命筏は海上に浮かべ周囲の救命索に掴まるだけのもので、ジャケット着用し、約2m下の海上に飛び込むことは、成人には容易でも船客には老人・幼児・身障者も含まれるため小型救命艇一隻と移乗施設を装備したい。
桟橋は総て車両と船客との通路は分離されて安全であるが、旅客用のタラップ(可動橋)は単純なもので手摺もロープである。大勢の乗客が下船時に殺到するようなケースを考えると船体傾斜も起こり、安全性に多少疑問を覚える。
スタンバイ時、船橋からは船首・船尾とも全く見通しが効かない。確かめられなかったが着桟時の錨の準備は必要であり、また主機の後進チェックも励行していただきたい。

ニ. (熊本〜島原)

 船長の意見では「本船航路上に漁具を設置している場合がある。特に島原入港進路上に設置されている場合、水深の関係で避航海域が極めて少なく座礁の恐れがある場合もある。減速や停船して対応している。漁業者とは理解しあっての対応に努力したい。漁を遠慮して欲しいとは言わないが、せめてフェリーの通航時には安全に通航できる海域を空けて欲しい。漁船の中にはプロでない者がいるようである。」とのことであった。
調査時の本船喫水は船首1.80m、船尾1.75m(航走中はStern Trimとなる。)で漁船は少なかったが、島原入港進路付近は浅所が多く、進路も屈曲している。
漁業用のボンテン等が存在する場合には操船に苦労することは明らかで、視界制限状態においてはなおさら操船者の労苦が忍ばれる。
漁業者船社双方の理解を進める機会を多く設けるとか、関係官庁の適切な指導も必要と考えられる。

ホ. (宇品〜呉〜高浜〜三津浜)

 乗客はほぼ中央のタラップから乗下船し、車両は前後部の可動橋からランプゲートに入るようになって人と車がセパレートされており良いことである。多数の乗客が下船時に下甲板に降りるため階段近くに集合するはずであるが、着桟のショックで前のめりになり転落の恐れがある。現在はトラロープ1本をフックで止め着桟完了を確認しマリンガールが外しているとのことであるが、丈夫な手摺式のゲートで下船の規制をする必要がある。

 

 

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